漫才コンビ、ザ・ぼんちの「三都市ライブ~日本一元気な漫才~」の最終公演が、12日に、東京・新宿のルミネtheよしもとで行われた。キャパ450人。開始予定時間の10分前まで半分くらいの入り。どうなるかと思ったが、そこは吉本、お笑いのプロ。ちょい押しで始まる頃には、きっちり客席が埋まっていた。会場を借りて、スタッフを手配して…という手間がいらないのは、常設の劇場を持っているからならではの強みだ。

 で、ザ・ぼんち。大阪の興国高校の同級生で、72年にコンビを組んでデビュー。いろいろあったが、吉本に落ち着いた。

 今回の東京での単独ライブは、81年の日本武道館以来35年ぶりだった。フジテレビ系「花王名人劇場」「THE MANZAI」の大ヒットによる、漫才ブームの中、近田春夫作詞/作曲の「恋のぼんちシート」は81年に80万枚も売り上げた。

 ザ・ぼんちの2人は、オープニングで「恋の-」を熱唱。ネタの元になった、テレビ朝日系「モーニングショー」の司会、川崎敬三さんは昨年、お亡くなりになった。あいかわらずの、とんでもないボケを連発するぼんちおさむ(63)と、困ってツッコミながら進行させる里見まさと(63)。長年、培った技は健在だ。

 が、この2人にも空白期間があった。86年にコンビを解消する。おさむは役者として、テレビ朝日系「はぐれ刑事純情派」で刑事役を演じた。一方のまさとは、亀山房代と「里見まさと・亀山房代」を組んで、再び一から漫才に挑んだ。98年に上方漫才大賞を受賞。01年に解散した。

 おさむは「役名が里見刑事なんですよね。やっぱり、どこかでつながっていたいのかな」。まさとは「おさむがいないと、なんにもできないまさとと言われた。だから必死でした」と、振り返る。

 03年にザ・ぼんちを再開。現在、63歳の2人。サラリーマンになった同級生たちは、60歳の定年を迎え、その後も嘱託などで会社に残り、そして本当の卒業の時ももうすぐ迎えようとしている。2人は「この年になっても、元気に漫才が出来るのはありがたい」と、次の大きな目標に90歳での漫才をあげる。今公演でも、90歳になった設定でネタを演じたが、熟成に発酵まで加わった? ネタで大いに笑えた。

 漫才ブームで売れたコンビは多いが、今もそのままの形で見かけることの出来るコンビは少ない。当時、重しとして出演していた「やすし・きよし」のやっさんは黄泉(よみ)の国に旅立った。「紳助・竜介」の竜介さんもいない。「いくよ・くるよ」のいくよ姉さんも、病に倒れた。「B&B」がそろうのは、数年に1度くらいだ。「セント・ルイス」も、共にはもう見ることはできない。「サブロー・シロー」も、もうそろわない。「春やすこ・けいこ」は、どうしたんだっけ(笑い)。「ツービート」だって、そろうのはゴルフ大会くらい。

 ザ・ぼんちによると「オール阪神・巨人」の2人は「後輩だけど、漫才ブームの前から売れていた」そうだ。「中田カウス・ボタン」は「他の無名漫才が東京に行くときに、関西の押さえとして残された」そうだ。つまり、当時から実力が認められていた。

 ザ・ぼんちの2人が意識するのは「のりお・よしお」の2人だ。はちゃめちゃなボケののりおに、的確なツッコミのよしお。スタイルも、似ている。一緒の舞台に出ると、互いに意識しあってヒートするそうだ。

 90歳までは、あと30年近くある。そこまで頑張って欲しい。まあ、こちらが、そこまで長生きできる可能性は低いのだが…。【小谷野俊哉】