テレビドラマの優れた脚本家に贈られる第34回向田邦子賞の受賞者が5日、都内で発表され、NHK総合の木曜時代劇「ちかえもん」を手掛けた藤本有紀さん(48)が受賞した。昨年度、放送されたテレビドラマが対象で、時代劇での受賞は同賞史上初めて。

 「ちかえもん」は今年1~3月に放送された時代劇。近松門左衛門が「曽根崎心中」を仕上げるまでの紆余(うよ)曲折を描いた。大阪弁の言葉遊びを使っておもしろおかしく脚本化した藤本さんの筆力が、高く評価された。第3回の同賞受賞者で、選考委員長の池端俊策氏は「抜群におもしろくて、対抗馬が見当たらないぐらい脚本の力がみなぎっていた。筆力がある方。全員一致で、(選考会では)早く決まりました」と絶賛した。

 藤本さんはフジテレビ系「ラブ・レボリューション」をはじめ、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」(07年)や大河ドラマ「平清盛」(12年)などを手掛けている。受賞の喜びを聞かれ、「時代劇が最近、数が減っていて、木曜時代劇も『ちかえもん』で終わってしまうと聞いていた。こういう形で作品が賞をいただけて、書いていて良かったなと思う」と感慨深げだった。

 今後の執筆活動について藤本さんは「『ちかえもん』を書く時に思ったことは、自分は物語りたかったんだということ。次の作品も、物語れるものを作りたい。『ちりとてちん』の言葉で言えば、小さい人間の大きなロマンを書きたいということです」と意欲を見せた。

 藤本さんには本賞として特製万年筆と、副賞300万円が贈られる。授賞式は5月31日に東京・帝国ホテルで行われる。