女優の有森也実(49)が文字通り体を張っている。5月公開の主演映画「いぬむこいり」(片嶋一貴監督)で、4時間の長尺の中で「犬男」との過激なラブシーン、放尿シーン、全裸…とすべてをさらけ出す熱演だ。延べ32日間の撮影後は「もう女優を辞めようと思った」ほど“完全燃焼”したという。

 「いぬむこいり」は、犬と人間の女性が夫婦生活をおくる伝承民話「犬婿入り」をもとにしている。失恋の痛手を癒やすために旅に出た女性教師が世間の不条理にもまれながら、やがては「犬婿」の神話世界に迷い込むファンタジックな作品だ。

 後半では、頭は犬、体は人間の「犬男」(山根和馬)と体を重ね、無人島での野性的な生活が描かれる。ヌードでの異色のラブシーン、放尿シーンなど、体当たりの演技を見せる。

 有森は「片嶋監督とは8年前から何本かお仕事をさせていただいてます。企画の段階でいろんなお話をしているうちにどんどん話が膨らんで、ここまできてしまった。監督の情熱があふれて、台本の厚さも通常の倍だし。犬男とのシーンは主人公の解放感を表現するポイントですから、正面から取り組みました。設定が40代後半だったので、年齢的にもぎりぎりのところでした。もうちょっとメリハリのある体だったら良かったんでしょうけど」と、初体験となった大胆なラブシーンを淡々と振り返る。

 少年少女のいびつな行動を描いた「アジアの純真」で11年のロッテルダム映画祭で話題を呼んだ片嶋一貴監督(59)は「エロス表現を極めたいと思いました。激しいシーンが最後の1週間に集中し、カットによっては30回以上撮り直しを重ねたから、有森さんもぼろぼろだったと思います」という。有森も「確かに、終わったときはもう女優辞めようと思いました。もういいって。今少しずつ立ち直ってきたところです」と撮了直後の思いを明かした。

 犬男とのラブシーンはバリエーションに富み、エロスがにじみ出ている。スリムでセクシーなボディーラインは、5歳から始め、現在も続けているクラシックバレエのたまものかもしれない。4時間の長尺は見応えがある。石橋蓮司、柄本明ら実力派が脇を固め、ロックミュージシャンのPANTA、緑魔子といった個性派が厚みをつけている。【相原斎】

 ◆有森也実(ありもり・なりみ)1967年(昭42)12月10日、神奈川県生まれ。中学3年のときにファッション誌の専属モデルになり芸能界入り。86年、映画「星空のむこうの国」でデビュー。同年、映画「キネマの天地」のヒロインに。91年連続ドラマ「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)でも注目された。私生活では19歳になるネコを飼っている。

 ◆いぬむこいり 伝承民話「犬婿入り」をモチーフに、小学校教諭のヒロインの時空を超えた冒険の旅を描く。4章構成4時間の大作。バンド「勝手にしやがれ」のリーダー、武藤昭平が旅をともにするペテン師に。江口のりこ、尚玄、ベンガル、山根和馬、韓英恵らが彩りを添えている。