男女4人組コーラスグループのサーカスが7日、大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、新アルバム「POP STEP BALLAD」(1月25日発売)をPRした。新譜のテーマはタイトルの通り「バラード」。ハーモニーとピアノの音色や息づかいまでもがダイレクトに伝わるような楽曲を選んだ。今回はメンバーが敬愛する5組6人のピアニストを迎え、歌を乗せた。1曲ごとに異なるピアニストと5曲、全ピアニストが参加してのセッション1曲の全6曲を収録。メンバーの叶高(かのう・たかし=62)は「ピアニストは同じ演奏条件下でもサウンドの感じがそれぞれ異なる。個性豊かな6曲で、想像をはるかに超えた作品が出来た」と胸を張った。

 ピアニスト陣はアレンジャーとして日本の音楽シーンを支える、そうそうたる顔ぶれがそろった。中でも78年にヒット曲「ミスターサマータイム」を編曲したベテラン前田憲男(82)は、サーカスのメンバー交代を経て足掛け39年の親交を続ける。「年輪のように年を重ねたからこそ漂うゆったりとした空気感がすごい。リスペクトしかない」と叶正子(64)。「以前バラードをアレンジしてもらったとき、力の抜け具合や、タッチが色っぽかったので、今回もお願いした」と高。メンバーは前田の演奏や雰囲気にぞっこんだが、レコーディング当日もその人柄を垣間見ることが出来たという。「実はアルバム制作の日、前田先生にアレンジいただく2曲の譜面をお持ちいただくはずでした。しかし現場に1曲分しかお持ちにならなかったのです」。驚いたメンバーがもう1曲の在りかを聞くと、「影も形もない。アレンジャーの悪い癖が出た」とサラリ。拍子抜けした「メンバーの爆笑を誘った」とメンバーの吉村勇一(31)が秘話を明かした。そんなリラックスした演奏は、本作2曲目の「夢の場所まで」で聴くことができる。

 1曲目の「桜色のみち」を弾いたピアニスト島健(66)とのやりとりも印象に残った。作曲した叶ありさは「何度も連絡をいただいて、アレンジの方向性を確認していただいた。私がイメージする風景の通りかどうか何度も聞かれた。収録が終わった後も、どうしても直したい箇所があると再収録。いいものを作りたいという強い思いを感じた」。

 一方で3曲目の「Unchanging」では、ともにピアニストの佐山雅弘(63)と息子こうたの親子共演が初めて実現した。「録りっぱなしという感じ。互いに現場で呼応し合って、アドリブな世界観。それで新しいフレーズが出て来る」と、その即興スタイルにメンバーも驚きを隠さない。2人の照れや熱情が伝わる演奏が耳に残る。

 ほかにも国府弘子や鈴木和郎といった一線級のピアニストとのコラボレーションが続く。作詞も松井五郎や竜真知子など豪華布陣を敷いた。「ピアニストは互いに競い合うのではなく、6人がリスペクトし合っている。以前から親交のある音楽家も含め全員に快諾いただいた」。78年から始まったサーカスだからこそ実現した構成となった。

 「POP STEP」シリーズは「JAZZ」、「BOSSA」に続く第3弾としてリリース。ジャンルも世代も関係なく、サーカスのハーモニーが音楽の世界をつないでいく。叶ありさ(33)は「サーカスは音楽ジャンルを超えて、様々な曲をポップで歌う。新作は出会いと別れの季節にピッタリ。ぜひライブに来て聴いていただければ」と笑顔で語った。

 4月に東名阪でツアーを行う。21日がビルボードライブ大阪、翌22日が名古屋ブルーノート、27日はコットンクラブ東京・丸の内で開催。出演ピアニストも、スケジュールの都合が合わなかった国府以外は全員が参加予定。詳細は公式サイト(http://www.soundcircus.co.jp/)を参照。