落語家桂文枝(73)が18日、大阪市中央区の大阪国際がんセンターで、「笑いとがん医療の実証研究」の一環としての寄席「わろてまえ劇場」の第1回公演で高座に上がった。

 研究は、同センターが日本で初めての取り組みとして、がん患者らを対象に「笑い」の舞台を定期的に鑑賞することが生活の質(QOL)や、免疫機能などに与える影響を調べるもので、この日は、弟子の桂三風(55)桂三語(31)とともにネタを披露した。

 トリで登場した文枝は「笑いがストレスを下げる言うて、皆さんが笑ってくれないと私のストレスが高くなってしまう」と、まくらからいきなり笑いを誘った。耳鼻咽喉科、歯医者と病院ネタを織り交ぜた20分の「ぼやき酒屋」を演じ、終演後には「笑ってもらえたようで、私のストレスはゼロでした」と笑った。

 がん闘病と笑いの関係については「効果があるかないかは、私には分かりませんけど、昔から『笑いは気の薬』と言います」と言い、以前、自身のファンだった女性との秘話も明かした。母ががん闘病中だった女性が、母と一緒に文枝の高座を見に来て「楽しかった。また一緒に来たいと(闘病の)励みになったとおっしゃってくださった。最後の最後も、私の落語を病室で聴いてくださっていたそうです」と話した。

 この日の客席には、研究対象の患者40人や、医療スタッフ。文枝は「舞台に出てしまうと、地域寄席とかの高座と同じやけど、ここに立つまでのアプローチが、病院やな、と。患者さんもですけど、お医者さんにも笑いを教えるというか、患者さんを笑わせられるように落語を学んで欲しい」とも語った。

 またこの日、将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が自身の持つデビュー後の連勝記録を「18」に更新。将棋好きで、将棋イベントへの出演経験も豊富な文枝は「若い力が彗星(すいせい)のように出てきて、将棋界はうらやましい。落語界にも出てこんかなあ」と、ぼやきもポロリ漏らした。

 それでも「せっかくやから、私も将棋イベントにはよく出させてもらっていますので、この(わろてまえ)劇場で、藤井さんと対談とかしたいですね」と話していた。

 この「わろてまえ劇場」は吉本興業、松竹芸能、米朝事務所が協力して開催。事務所の垣根をなくし、多様な落語家、漫才師が順次、登場する。今後は2週間に1回、計8回の寄席を開き、がん患者と付き添い者、医療提供者が鑑賞し、研究対象者の患者の数値を検証する。