若大将加山雄三は80歳になっても若大将だった。

 少なくとも記者の目にはそう映った。そごう横浜店で開催されたトークショーに続き、岩谷時子賞授賞式と、2日続けて取材したが、体力的にも、精神的にもその若さを目の当たりにした。

 若さの秘訣(ひけつ)を聞かれた加山は「自分では分からないんだよ」と笑った。「同年代とは話が合わない。脳梗塞とか、心筋梗塞とか不健康自慢になるんだけど、俺はなったこともないから」と笑いながら話し、「ギター、ピアノ、陶芸、絵画と指を使うことが好きで、結果的にそれがボケ防止になっているのかな」と自己分析を語った。

 記者が加山の若さを感じたのは、夢について語っている姿だった。「80歳までに自分で設計している船を完成させたい」。以前そう言っていたが今年4月、その80歳になった。進捗(しんちょく)状況を「進んでいるような、止まっているような」と切り出し、「とにかく金がかかるんだよ(笑い)材料も進化しているしね。でも、考えていると楽しくて。後は協力してくれる会社あれば」とまるで少年のように目を輝かせた。この船で喜望峰から南極に向かうのが夢の1つだという。「まぁ、楽しみにしていてください!」と話す姿はまるで30代の青年のようだった。

 音楽では7月末、新潟・苗場スキー場で開催される「フジロックフェスティバル'17」のメイン会場となるグリーンステージへの出演が決まっている。「去年は小さい所だったけど、今年はメインステージなんだよ。2万人もいるんだ。今から楽しみだね。もしかしたら、俺が最高齢なんじゃないかな」とこちらも目を輝かせながら話した。メインステージは約4万人の観衆で、最高齢はおそらくオノヨーコだと思われるが、そんなことはどうでも良かった。

 「願えば夢はかなうんだよ」と加山は言う。もちろん夢をかなえるためには本人の努力が必要なのは百も承知。しかし、願い続け、努力し続けることは意外と体力も気力もいる。それを持続し続けられる加山に若さを感じた。これこそが、若さの秘訣(ひけつ)なのかもしれない。