女優野際陽子さん(享年81)が13日に肺腺がんのため死去したことを受け、15日、野際さんにとって遺作の映画となった「いつまた、君と」(24日公開)の深川栄洋監督が追悼のメッセージを寄せた。

 映画は、向井理(35)の祖母朋子さんの手記を原作とした作品で、貧しいながらもたくましく戦後を生き抜いた家族が描かれている。主演は尾野真千子(35)だが、野際さんは現代パートで晩年の朋子さんを演じていた。

 同作は、14年にがんが発覚し、手術を受けた野際さんにとっての仕事復帰作だった。深川監督によると、野際さんは「物語の主人公である向井理さんのおばあちゃんの役をすることに、とてもやりがいを感じていた」という。

 深川監督が野際さんと初めて対面したのは、映画の衣装合わせのときだった。そのときを振り返り「野際さんのお母さんのお話から始まり、疎開をしなかった野際さんが見た戦争中の東京のこと、戦争の後の暮らしぶりを教えて頂きました。そして、今まで積極的にやらなかったけど、これからは自分の経験したこと、考えていることを若い僕たちにも話していこうと思っているとおっしゃっていました」と、がんを患った野際さんが、自身の経験を若い世代に伝えようとしていたことを明かした。

 深川監督はさらに「悲しい知らせを受けて思う今、もっともっとお話しを聞かせていただきたかった…と、悔しい思いばかりです。せりふを完璧に覚え、正しい発音で芝居をされる野際さん。またスクリーンでお会いしましょう」とつづっている。