人生のどん底を経験した森脇健児(50)の泥臭さに好感を抱いた。

 先日、ある洋画のトークイベントに登壇した。イベントは夕方だったが、その日は突発的な芸能ニュースが豊富で、集まった記者は少なかった。

 このままでは、翌日のスポーツ紙やワイドショーで、自分のイベントが飛ばされると察したのだろう。捨て身の策に打って出た。

 映画の内容にちなんだ「人生の危機」がトークのテーマだった。すると森脇は「月給が800万から8万になったこと」と、かなり具体的な数字を明かして、過去の転落エピソードを語った。

 90年代には、フジテレビ系「夢がMORI MORI」など冠番組を多数持つ売れっ子だった。しかし、次第に東京での仕事がなくなり、本拠地だった関西に出戻る屈辱を味わった。その転落劇を、数字まで持ち出して示したのである。

 バラエティー番組などでも、収入の話をするタレントはいる。そうした生々しい話題は、下世話ではあるが、多くの人の関心を集め、ニュースになりやすい傾向がある。おそらく森脇はそれを分かった上で、発言したのだろう。

 それだけではない。イベント中に「写真撮ってください。SNSでなんぼでも上げてください。上げてもらったもん勝ちや!」と言い出して、写真撮影の時間でもないのに、目の前にカメラ1台1台に目線を送り、ポーズをとった。「記者の皆さん、質問あればどうぞ。今日、僕、何でも答えますよ!」と宣言。自分とは関係ない時事ネタにも反応した。最後は「(陸上の)桐生(祥秀)が、僕の(京都・洛南高校の)後輩なんで、9秒台出たらコメントしますよ!」と言い、プライドをかなぐり捨てて、スター選手の快挙に便乗しようとまでした。

 日頃、さまざまな芸能イベントを取材していると、「本当にこの人は、ニュースとして取り上げられたいと思っているのか」と、疑問を抱くこともある。その点、この日の森脇の泥臭さは潔かった。したたかだ、いやらしい、という声があるのかもしれないが、1周回って(=あらためて)潔いその姿勢に、すがすがしさを覚えた。