シンガー・ソングライター高橋優(33)の新曲「虹」(26日発売)が完成した。朝日放送「夏の高校野球」応援ソング、テレビ朝日系「熱闘甲子園」テーマソングとして書き下ろした。曲制作のために旅に出て高校球児たちの姿を目に焼き付けた。そこで得たもの、曲に込めた思いなどを聞いた。

 旅は3月から始まった。甲子園のセンバツ高校野球大会のほか、各地で3試合を観戦した。神宮第2球場で行われた早実の清宮幸太郎内野手が出場した試合にも足を運んだ。早実が勝ったが清宮は無安打だった。

 「曲を書くテーマの1つとして人を書きたかった。スター、怪物と呼ばれていても人の子。打てない日もある。逆に清宮君がヒットを打たない日に、見に行かせてもらって良かったと思います」

 本格的な野球経験はない。旅で印象に残ったのは「捕れただろ、みたいな球を落とすエラー」という。「逃げられない大変さの中、あきらめずにいいプレーをしようと、かたくなに立ち向かう。思い通りにいってないんだろうな、と」。思い浮かんだ言葉をノートに書き留め続けた。地元秋田の母校の試合も観戦したがコールド負けを喫した。「曲作りのことをちょっと忘れてました」。

 新曲「虹」のテーマは「奇跡を待つな、奇跡になれ」。当初テーマは声や音に限定していたが、高校球児そのものへと大きく広がっていった。

 「虹が見られてラッキーって言いますけど、もっとすごい景色を、俺たちはこのバット1本、ボール1個で作るんだぜ、とやっているように見えた。奇跡を虹になぞらえ、虹を待つな、虹になれ、という曲になっていきました」

 曲制作に3カ月以上を費やした。「悩んで悩んで自分らしい言葉にしたい」。テレビ局から「グラウンド」という言葉を入れて欲しいと要望もあったが、野球用語は「タッチアウト」しか入れなかった。

 「高校球児でさえ、試合時間は1日の中で2時間ちょっと。ユニホームに着替えるまでや、脱いだ後などにフォーカスを当てたいと思った。元球児や球児以外の人たちにも、もっと素晴らしい瞬間を迎えることがあるかもしれないという、1つの提案として聴いてもらえたらうれしい」

 ささやかな夢もある。

 「今年の高校球児の中でたった1人でもいいから、『虹』が俺のテーマソングなんだよと言ってくれる人にいつか出会えたら。僕の小さな夢です」【近藤由美子】