歌舞伎俳優市川海老蔵(39)と長男勸玄(かんげん)君(4)が3日、東京・歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部「駄右衛門花御所異聞」で宙乗りを披露した。4歳での宙乗りは史上最年少記録。先月22日に乳がんで死去した海老蔵の妻小林麻央さん(享年34)にとって、見に来ることを「1つの目標」として闘病の支えにしていた舞台だった。

 勸玄君は白狐(びゃっこ)役で、海老蔵演じる神様、秋葉大権現の使いという設定。白い耳を付けて花道から登場し「勸玄白狐、御前(おんまえ)に」とせりふを言うと舞台中央の海老蔵のもとに駆け寄った。万雷の拍手に「成田屋!」の掛け声もかき消されるほどだった。2人はスッポンと呼ばれる花道上のセリから上がって宙乗りした。勸玄君は海老蔵に抱えられるような形で最初は下を向いていたが、右手を振ると悲鳴のような歓声を浴びた。両手を振り、海老蔵の方を向いて小さくうなずいた。最大10メートルの高さにおびえることなく、堂々と3階客席に消えていった。麻央さんに届くような大きな宙乗りだった。

 海老蔵は終了後「なんとか飛んでくれました」のタイトルでブログを更新。「よくやった。そばにママいたね、と互いに話しました」とつづった。終演後、見送りで集まっていたファンの声援を浴びながら、長女麗禾(れいか)ちゃん(5)と勸玄君の手を引いて歌舞伎座を後にした。公演は27日まで。【小林千穂】