フジテレビの新体制がスタートした。宮内正喜新社長(73)が誕生して、組織も「21局3室」から「14局4室」へとスリム化? した。

 宮内社長は就任前の先月16日と、就任後の今月7日、会見してマスコミからの質問に答えた。61歳の亀山千広前社長から一回り上の宮内社長へと、その年齢が疑問視されたが、年寄りめいたことはなく、そのイケメンぶりも好感を持って迎えることができた。やはりテレビは映像が勝負、社長だって見た目が大切だ。

 個人的には、フジテレビには「キー局初の女性社長誕生」を期待して、昨年から同局関係者にも進言していたのだけど相手にしてもらえなかった。視聴率低迷が業績不振の最大の原因なのだから、思い切って「公共放送NHKの前会長の籾井勝人氏はどうだろうか」とも考えてみたが年齢がネックになった。でも、籾井氏は現在74歳。宮内社長の10カ月年上にしか過ぎないので、ちょっと惜しい気がする。

 いろいろ物議を醸した籾井氏だが、もともとは米国三井物産社長を務めた一流ビジネスマン、きっとフジテレビを改革してくれたはずだ。なによりも、国会答弁などで注目を浴びて“視聴率を持っている”。視聴率低迷の同局には言い刺激になっただろう。「楽しくなければテレビじゃない」という局のカラーにもピッタリだ。

 などと、冗談交じりに書いてきたのだが、本音半分、冗談半分で岡目八目のフジテレビ改革案を考えてみた。

 まずは、お台場という場所。東京新都心と言われるが、大部分の都民にとっては遠い。弊社のある築地からは、タクシーに乗れば3000円前後で15分ほどで着くのだが、電車だと1時間で料金も500円弱。業界人がフラリと顔を出すのには、あまりに時間と金がかかりすぎる。なんの用もないのに、往復でなんだかんだ3時間、1000円は痛い。人が集まらないのが、業績低迷につながっているのではないか。

 宮内社長は、8年間務めた岡山放送の社長時代にイオンモール岡山に「OHKまちなかスタジオミルン」を開業させて、地域密着型戦略を打ち出して手腕をふるった。ここは1つ、都心にサテライトスポットをつくったらいかがだろうか。

 宮内社長はフジテレビ社長であるとともに、その親玉の持ち株会社であるフジサンケイホールディングスの社長でもある。フジテレビ、ニッポン放送、産経新聞と並ぶグループ中核会社にサンケイビルもある。ニッポン放送に隣接する、日比谷サンケイビルにスタジオを作り、編成や広報などの一部の機能を移せば、業界人万来、アイデアも泉のごとく湧いてくるだろう。

 ちなみに業績好調の汐留の日本テレビ16階にあるファミリーマートは、単位面積あたりの売り上げが日本一らしい。店舗の前のスペースには電源もある。汐留、新橋駅からNHK、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、そしてフジテレビにも電車1本で乗り換えナシで行くことができる。SNSに「日テレなう」などと投稿すれば、16階にたむろする、誰かしら業界人から、すぐに電話がかかってきて、お茶を飲みながらフェース・トゥー・フェースで仕事だったり遊びの話になる。

 あと、災害報道の目玉マークのヘルメット。あれは、やめた方がいいと思う。「楽しくなければテレビじゃない」の象徴を掲げて、バラエティーでも活躍しているアナウンサーがリポートしているのを見ると違和感を感じる。熊本の大地震の時に、フジテレビ関係者に進言したら「人の会社のマークにケチをつけるな」と、まっとうな理由で怒られた。それほど悪意のある提言ではないと思っていたのだが…。最近は災害報道で「FNN(フジニュースネットワーク)」の文字の入ったヘルメットを見ることが多くなったので「やはり、俺と同じことを考えていた人間がいたんだ」と思ったが、先日の九州の大雨の報道で、バラエティーで人気だったアナウンサーが目玉マークのヘルメットでリポートしていた。数々のバラエティー番組での楽しい姿が思い浮かんで複雑な気持ちになった。フジテレビの面白さにどっぷりひたった経験を持つ記者ならではの杞憂(きゆう)ならいいのだが。

 「14局4室」も機能するかを見守りたい。宮内社長は、就任後初の今月7日の会見で、最近起きた情報番組の誤報について「(裏取りの)精査は慎重にやってもらいたいと現場に指示を出している。各現場のチェック体制を再点検する」と話した。だが、皮肉なことに、その日に行われたドラマの制作発表で配られた資料の放送日時が間違っていた。マンパワーに頼ったミスは必ず起こる。気を引き締めてほしいというより、体制をしっかりしてほしい。

 今回の機構改革が「社の3分の2の1000人が異動した」と言われる3年前の二の舞いにならないことも祈っている。1000人と言われたが「部署の名称が変わったり、分割されたりで、名刺は変わったが仕事は変わらず」という人が数多くいた。今回の改革でも、今までの「局」「室」「部」に加えて「センター」というものまで出てきて、分かりにくくなった。詳しくは書かないが、現場でも同様だ。実の伴った改革を宮内新社長に期待した。