上方落語協会が大阪の天満天神繁昌亭に続き、2館目の定席として来夏にオープンを予定する神戸の定席劇場について、桂文枝会長(74)が16日、神戸・新開地の商店街で、名称を「神戸新開地・喜楽館(きらくかん)」と発表した。

 落語専門の繁昌亭とは一線を画し、夜には音楽など多様なイベントも企画。文枝自身が大の将棋ファンで、神戸市出身の谷川浩司九段(55)と親交があることから、将棋イベントも計画。藤井聡太四段(15)にも「いらっしゃ~い!」と“共演”を呼びかけた。

 「神戸はジャズの街でもあり、チャプリンも訪れた演劇の街。落語だけではなく、夜にはいろんなイベントをしようと思う。谷川さんもここ(神戸)の出身ですし、将棋とのコラボも考えていて、ぜひとも藤井四段にも来ていただいて、盛り上げていただきたい」

 文枝は、来年8期目の会長職任期を終え、いったんは勇退の意向を示していたが、今夏に富士登山を成功させ「体力的に自信がついた」ことや、神戸の定席「喜楽館」の名誉館長就任も決まっていることから、「神戸が軌道にのるまでは、会長を続けたい」として、すでに9期目へ意欲を見せている。

 06年、大阪天満宮の駐車場跡地に、上方では戦後初の定席「繁昌亭」をオープンさせ、上方落語家の悲願を達成。文枝は以後も、漫才に比べて肩身の狭い上方落語家の活躍の場を広げようと、3年前から兵庫県や神戸市と交渉。弟弟子の桂きん枝を実行役員とし、新開地に神戸定席を開くところまでこぎ着けた。

 この日、名称発表会には井戸敏三兵庫県知事、久元喜造神戸市長も出席。その後、建設予定地へ場所を移した竣工(しゅんこう)式にも臨んだ井戸知事は「新開地 喜びと楽しみ 発する館作らん 市民期待す」と、趣味の俳句を詠み、文枝に感謝を表現した。

 地元の支援も取りつけ、文枝はすでに、神戸定席の運営と発展へ思いを進めており、その目玉イベントのひとつが、最年少プロ棋士の藤井四段の招請だった。藤井四段と同じ14歳でデビューした谷川九段とは旧知でもあり、協力をあおげる態勢にはある。

 文枝は、今年、日本将棋連盟の会長を辞任した谷川九段に「谷川さんのことも、もう1度応援したい」とし、「将棋と一緒に盛り上がっていきたい。藤井四段も学校もあるでしょうけど、冬休みとか、どこかで来てもらえれば」と話した。

 神戸・新開地の定席「喜楽館」は今後、工事に入り、来年3月ごろ、工事は終了。同夏にはオープンを予定する。漫才や落語が上演された神戸松竹座が76年に閉館して以来、42年ぶりの寄席小屋の誕生となる。今後、施設整備にかかる費用について、最低5000万円を目標に寄付を呼びかけていく。