インドの神話的叙事詩をもとにした新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」の準備でインドを訪れた尾上菊之助(40)が23日、帰国した。滞在5日間の後半でガンジス川上流を訪問。「芸術祭十月大歌舞伎」(10月1~25日、東京・歌舞伎座)で上演する同作ポスターの撮影などを行った。歌舞伎ポスターの海外撮影は異例で、大自然の中での撮影は初めて。

 撮影はヨガの聖地リシケシで行った。菊之助は金色のよろいに弓矢を持ち、悲劇の英雄、迦楼奈(かるな)になった。雨期で水量が多く流れも速いが、約1時間半、力強いポーズを取り続けた。近くに沐浴(もくよく)する人々や野良犬もいた。インドらしい光景の中で撮影を終えると「すごく良かった。日本では絶対に撮れないものになりました。芝居の幕開きはガンジス川の場面。遠くに感じていた存在が現実味を帯びて役に近づいていける」。

 短い滞在ながら得たものは大きかった。「40代のスタートでインドに来て、進むべき道をまっとうしなくてはならないと強く感じた。アンテナを張り続け、歌舞伎の屋台骨を支えるようにならないといけない」。インドは人生観を変えると言われるが、菊之助は歌舞伎への思いを強固にした。【小林千穂】