俳優松坂桃李(28)が、主人公の夫を演じる次期NHK連続テレビ小説「わろてんか」(10月2日スタート、月~土曜午前8時)の放送に先立ち、同作への思い語った。

 作品は、葵わかな(19)が主演し、明治末から昭和初期にかけて日本に笑いの文化を根付かせていく女性を描く。松坂はヒロインてんの将来の夫藤吉を演じる。第1週は、てんの幼少期を描き、9歳のてんを演じた新井美羽やてんの幼なじみ役の鈴木福ら、子役にまじり、松坂は15歳の藤吉を自ら演じた。

 「相手役は美羽ちゃん、周りも福君という実年齢の差が、かなりある状態からスタートするので、僕も、かがむとか、なるべく立って芝居をせず、しゃがむことをとり入れていました」

 藤吉は日本一の芸人になる夢を持っていたが才能がない設定。松坂は、劇中、さまざまな芸に挑戦している。

 「監督から『いろいろ芸事はやりますが、うまくやらなくていいから』と言われてます。でも、うまくできる自信はあまりないです。本当にすごくいろんなことをやるんです。傘を回し、その上に物を乗せて転がせたり。やると聞いた時は、無理です。できませんと。ただ、それを通して、藤吉は芸が好きなんだなと身をもって実感できます。うますぎてNGになったことは見事に1度もないです(笑い)」

 朝ドラは12年の「梅ちゃん先生」以来、2度目。当時と今回に意識の違いも感じている。

 「あらためて朝ドラは難しいと思いました。スケジュールを見ても順撮りではなく、台本がどんどんできあがる中で、自分の中の気持ちをちゃんと構築しておかないと置いていかれ、パニックに。毎日、しっかりと心の準備をしておかないと乗り遅れる感じがあると今、すごく実感します。5年前は、うまく監督に転がされ、何とか、やれたと、今、分かりました。スタッフが裏で動いている感じも前回より見えるようになり、全スタッフが、これだけの働きをしないと完成しない作品だと痛感しています」

 演じる藤吉の魅力をどう感じているのか。

 「気持ちの表し方がストレート。シンプルで気持ちいい。うそがつけないタイプと思う。てんちゃんと結婚する流れの中で、うそがつけなくて、むちゃくちゃなことをやったりする。細かいこと、後先を考えずに真っすぐ進むのが藤吉の魅力。僕は大きいことは怖くてできなかったりするし。男としてカッコイイ」。

 松坂にとって笑いとは。

 「笑いは薬。心の薬。自分の中で嫌なこと、つらいこと、いろんな感情な中、無条件にコントや漫才を見て笑えると、気持ちがとても緩和されるというか、明日の方に気持ちが切り替わるというか。悩みや不安を抱える現状が一瞬、無くなるというか。自分の中で笑いは心の薬です」

 朝ドラ2回目だが、いずれも夫役。

 「他の役者さんと違ってヒロインとすごす時間は圧倒的に多い。今の『わろてんか』のスタンスで言うと、てんちゃんにはリラックスしてほしいなと思います。柔らかく、ぎすぎすしなくなる空気でいてほしい。ヒロインは、とにかく大変。プレッシャーとか不安感もあるでしょう。そういう中、心の友のようなポジションでいられたらと思う」

 最近の朝ドラはイケメンの登場が女性の視聴者にうけている。

 「てんちゃんを取り巻くいろんなタイプの男性陣が大勢登場します。しかも笑いをテーマとしているので、ちょっとチョケたりします。王道の朝ドラではありますが、入り方が、笑いをテーマにしている部分、違った角度から入ってくるので、もしかしたら整った顔の方がチョケた感じで出てくるかも。『別にそこまで興味がなかったのに、このチョケ方、私、好き』という人も出てくるかも。僕もうまくチョケているか分かりませんが期待して見てほしいです」

 NHKでは岡田准一が主演を務めた14年の「軍師官兵衛」にも出演した。大河の主役への意欲も聞いた。

 「あります。それはあります。岡田准一さんの『軍師官兵衛』を一緒にさせていただいた時、あの人の背中を見て、すごくカッコイイと思いました。自分もいつか、ああいう背中になってみたい。いつか岡田さんの通った位置に行ってみたいという思いは強いです」

 どんな作品、役がいいのか。

 「戦国時代が楽しいと思います。信長もやってみたい。戦国時代は誰もが知っている登場人物が多く、いろんな史実があり、いろんな切り口で作品が作られている。だからこそ、こういう信長、秀吉もいたんじゃないかと。男のロマンを詰め込みやすいと思います」

 強い意欲を、目を輝かせ、きっぱりと語る姿はすがすがしく、さわやか。大河の主役を務める日は遠くない気がする。【中野由喜】

 ◆松坂桃李(まつざか・とおり)1988年(昭63)10月17日、神奈川県生まれ。08年に雑誌「FINEBOYS」のモデルオーディション優勝で芸能界入り。09年テレビ朝日系「侍戦隊シンケンジャー」主演で俳優デビュー。映画は「僕たちは世界を変えることができない」「アントキノイノチ」など。ドラマは12年NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、14年大河ドラマ「軍師官兵衛」など。183センチ、血液型A。

 ◆「わろてんか」 大阪が活気にあふれていた大正時代をメインに、京都の老舗薬種問屋に生まれたヒロイン藤本てんが、大阪の米穀商の跡取り息子である北村藤吉と出会い、人生が一変。お笑い好きの藤吉と親の反対を押し切って結婚。しかし、芸事好きの夫が家業を傾かせる。ヒロインは夫の趣味を生かして寄席経営を始め、「笑いの都」大阪の礎を築いていく。吉本興業創業者の吉本せいがモデル。