菅田将暉(24)が主演男優賞に輝いた。史上最年少の受賞となった。ボクシングにのめり込む青年を全身で表現した「あゝ、荒野」、ボーカルグループGReeeeNの実話に基づく「キセキ-あの日のソビト-」、若手が集結したコメディー「帝一の國」、芸人の青春を描いた「火花」の4作で高い評価を受けた。

 「あゝ、荒野」の岸監督との出会いは16年の映画「二重生活」。絶大な信頼を置き「最愛の人」と慕う。「あゝ、荒野」では監督への信頼を深める出来事があった。ボクシングを知ろうと習い始めた監督が、ある日突然やめた。「撮影が佳境になると、みんな俺らのことを心配し出す。そんな中で岸さんだけは同情せず、ちゃんと監督として客観視してくれるんです。ボクシングの大変さを知ってしまうと早くカットをかけちゃう。自分の納得いくところでカットをかけたいから、ボクシングを途中で辞めたと話を聞いた時、感動しました。現場では誰よりも冷たかったですよ」。マネジャーも号泣したクライマックスシーンも、監督は一切表情を変えなかった。

 「キセキ-」の共演松坂桃李(29)、「帝一の國」で共演した同世代の俳優たち、「火花」の桐谷健太(37)-。周囲に恵まれた1年だったと感じている。「人と人とで仕事をしていくので、そいつのことを好きになれるかどうかって、すごい大事なんです。人の温かさ、冷たさを知ってる人たちと、人肌の気持ち良さを求めてお芝居できたっていうのは、恵まれたなって思います。感謝です」。

 17年は映画から派生してCDデビュー、生放送のラジオパーソナリティーなど新しいことに挑んだ。「いろんなものに制限を加えると、面白い話は舞い込んでこないなと思います。いろんな経験をして失敗して、ってやったほうが、人生面白いかなって感じはします。それが俳優としてかどうか分からないですけど、菅田将暉としての生き方が残ればそれでいいので」。そして「どうせなら、いろんなことやり切って、その他大勢じゃない道を歩みたいじゃないですか」。24歳の好奇心にゴールはない。【杉山理紗】

 ◆菅田将暉(すだ・まさき)1993年(平5)2月21日、大阪府生まれ。08年「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストに選出され芸能界入り。09年テレビ朝日系「仮面ライダーダブル」でデビュー、同年に同シリーズで映画デビュー。12年「王様とボク」で映画初主演。176センチ。血液型A。

 ◆火花 売れない芸人徳永(菅田将暉)は、営業先で出会った先輩芸人神谷(桐谷健太)の芸風と人間性に魅了され弟子入り。夢と現実のはざまに揺れながら10年間の青春を駆け抜ける。ピース又吉直樹の小説が原作。板尾創路監督。

 ◆キセキ-あの日のソビト- 歯科大生ヒデ(菅田将暉)は仲間とボーカルグループを組む。弟の才能に気がついたミュージシャンの兄ジン(松坂桃李)はグループのプロデューサーになり、共に夢を追いかける。GReeeeNの実話に基づく話。兼重淳監督。

 ◆帝一の國 名門海帝高校の生徒会長を務めたものは、将来の内閣入りが確約されている。野心家の赤場帝一(菅田将暉)は、生徒会長になるため、あらゆる手を尽くして生徒会長選を戦う。永井聡監督。

 ◆主演男優賞・選考経過 池松壮亮も人気だったが、菅田将暉が「本能的な演技は魅力。画面に出た瞬間に目が離せなくなる」(佐々木基氏)「作品のエネルギーは菅田さんの頑張りによるもの」(福島瑞穂氏)などと「あゝ、荒野」での演技を高く評価された。