1月は都内の4劇場で歌舞伎公演が行われている。歌舞伎座は高麗屋3代の襲名披露公演、新橋演舞場は市川海老蔵や長女麗禾(れいか)ちゃんの出演で話題だ。浅草公会堂は尾上松也ら若手俳優が奮闘、国立劇場は尾上菊五郎が率いての「世界花小栗判官」。華やかな物語を見せてくれる。

 舞台も華やかなら、観客も華やかだ。1年で最も着物率が高い。以前、舞台ではなく、観客や役者の妻、母らの着物だけを見に来る人に会って驚いたことがある。歌舞伎の初日や、歌舞伎役者の結婚式など、いい着物が見られる日には、友人と誘い合って出掛けるのだと話していた。

 「あれは○○ね」「帯との組み合わせが変わってるわね」「やっぱりあの奥さまはすてきね」とか、記者にはさっぱり分からない話だったが、楽しそうだった。

 開演時間になると、その人たちは劇場前を去っていった。「正月公演も着物を見に来ないとね」というようなことを言っていたのを、今年の公演取材で思い出したのだった。

 鉄道だって、乗り、撮り、音、食べ、時刻表など楽しみ方はいろいろある。そう思えば、歌舞伎でも着物だけ楽しむという人がいるのも納得。いろいろな楽しみ方があるんだなあ、と思った。