落語家立川志の輔(64)が、「ねことじいちゃん」で映画初主演する。世界的動物写真家の岩合光昭氏(67)の映画初監督作で、愛知県佐久島を中心に撮影している。このほど、志の輔、岩合監督が現地で、出演経緯や意気込みを語った。4月上旬クランクアップ、来年公開予定。

 志の輔はこれまで、映像の中で本格的に演技をしたことはなかった。何作かの映画は、印象的な場面でワンシーン、数カットという出演の仕方だった。岩合監督からオファーを受けた時のことを、志の輔は「何かの間違いだと驚きました。落語と演じることとはまったく違うと思っていました。最初はお断りしたんです」と振り返った。

 ただ、岩合監督が撮る、猫をはじめとした動物写真の大ファンで、NHK-BSプレミアムの人気番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」を欠かさず見ていた。数年前に食事をしたこともあり、縁も感じた。最終的には「岩合監督の『あなたしかいない。あなたならできる』との言葉にゆだねようという気持ち」になったという。20年以上司会を務める番組を引き合いに「すぐにガッテン! ではなかったんですね」と言うと、「そーんなわけないじゃない!」と笑った。

 「ねことじいちゃん」は、とある島で暮らす70歳の大吉と飼い猫タマ、島の人々を描いた物語。大吉は元校長先生というキャラクター。岩合監督は、1度食事をした時の志の輔に学究肌の面を感じ、印象に残ったという。出演を受けてもらい「跳び上がるほどうれしかった」と言った。

 志の輔は今月上旬に、クランクイン。前日は眠れないほどの緊張感を味わったそうだが、今では「40~50人が1つの座布団の上で、1つの作品を作っているようなもの。すごいです。見るもの聞くものすべてが初めてなので、初めての喜びがあります。カットを重ねるごとにうれしさを感じています」と楽しんでいる。そして、撮影後の自分にも期待を寄せる。「振り返って、人生最高の時間だったと思いたい。映画は自然体が大事なので、高座に戻った時、無駄な力が抜けている自分も楽しみ」。

 岩合監督は「人間の物語と並行して猫のストーリーもある。タマの恋や友情もある。今までに見たことがない猫の映画になる」と自信を見せた。志の輔も「出来上がりが楽しみ。でも、猫の自然な表情にはかなわないなあ。1日も早く監督に『今の良かったよ』と言ってもらいたい」と取り組んでいる。 【小林千穂】