12日放送のフジテレビ系「Mr.サンデー」(午後7時57分)で、タイ北部チェンライ郊外の洞窟に閉じ込められ無事救出された少年ら13人の奇跡の救出劇を“完全再現”する。

 3時間の「あのニュースを総力追跡SP」で取り上げるのは、タムルアン洞窟の遭難事故。今年6月23日にサッカーチーム「ムーパ・アカデミー」のメンバーの少年12人とコーチ1人が閉じこめられ、同10日に全員無事に救出された。

 奇跡の救出劇の裏には、7人のイギリスのダイバーがいた。最初に少年たちを発見したのが彼らの所属は、イギリス洞窟救助協会。彼らは「洞窟などでけがをした人たちを救助する」ことに特化した能力を持ち合わせていた。洞窟内のダイビング(潜水)は「ケイブダイビング」と言われ、通常のダイビングとは全く違う。洞窟内なので、浮上しても水面に出ることはできず、水が濁れば自分がどこにいるのかも分からなくなる。

 彼らは、通常は「ダイバー4、5人で人一人を救出する」。そして「視野が完全に閉ざされてはいない水中での救助」をしている。しかし、今回「ダイバー1人が少年1人を救出する」ことに挑んだ。ダイバーの1人リックは、救助作戦に参加した医師のハリーに「子供に鎮静剤を投与するか」を相談した。眠った状態の少年たちにマスクを着けて動かない状態にして、1人のダイバーが運ぶというものだった。医師は当初、この計画に反対した。しかし極限の環境で少年たちにパニックを起こさせない、唯一の方法だとリックは考えて、未知の救出作戦に挑んだ。

 雨期のタイで、洞窟の水位は日ごとに上がった。必死に排水作業が行われたが、雨が降り続く中、なかなか効果が表れなかった。地表のどの地点から、洞窟に雨水が流入しているのかを突き止めることが必要だった。JICA(国際協力機構)のタイ事務所は、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携して、衛星データから作った高精度の地図をタイ当局に提供した。

 番組では救出作戦の中心となった7人のイギリスダイバー全員を取材。救出劇の全容を放送する。

 取材に当たったフジテレビ情報制作センターのディレクター、メイズ・ジョナサンは「ダイバーの1人と連絡が取れて取材ができるとわかり、すぐにイギリスに行きました。7月25日~8月1日までイギリス、アイルランド、スペインと渡って奇跡的に7人全員の取材ができました。取材を通して、この救出がダイバーたちにとってもどれだけ危険だったのかよくわかったのと同時に、その強烈な責任感に心を打たれました。彼らが『自分たちはヒーローじゃない』と話していたことも印象に残りました」。宮下佐紀子チーフプロデューサーは「洞窟が水で満たされていて、逃げ場がない、誰が死んでもおかしくない。そんな特殊で危険な状況で、一種の賭けといってもおかしくない救出を行ったダイバーたちの強烈な使命感と自負心は、ニュースだけではわからないものでした。そもそもケイブダイバーは、洞窟という未知な世界にあこがれた人たち。そんな彼らが、今回、誰もやったことのない救出作戦に挑んだチャレンジ精神とチームワークを見てほしいと思います」と話している。