お笑い芸人バカリズム(42)がMCを務めるフジテレビ系のバラエティー「バカリズムのそこスルーする?」が、31日午後11時から放送される。今年4月4日に放送されギャラクシー賞月間賞を受賞した「世の中の“当たり前”を疑う」というコンセプトのバラエティーの第2弾。演出のフジテレビ竹内誠ゼネラルディレクター(GD=46)に聞いてみた。

竹内GDは、昨年に続いて、今年も9月8、9日に放送される「FNS27時間テレビ にほん人はなにを食べてきたか」の総合演出を2年連続で務める。去年、27時間テレビは、大きく変化した。それまでのお笑い主体から「歴史」というテーマを軸に据えて、総合司会がビートたけし(71)、キャプテンを関ジャニ∞村上信五(36)という態勢で臨んだ。それを補佐したのが、バカリズムのフリップ芸だった。

竹内GDは「去年の27時間テレビで笑いから歴史へ転換した時に、どうやったら面白くなるだろうかと考えて、バカリズムさん斜めの目線からが面白いとオファーしました。その視点をさらに広げれば、もっと面白くなると作ったのが『バカリズムのそこスルーする?』です。内容、方向性を相談しながら、最後の仕上げは画力でグイッと」と笑う。

よく考えたらおかしい状況なのに、なにげなくスルーしてて見すごしていることに対し、バカリズムが疑問を呈して、それをフリップ芸に落とし込んで笑いを取る。番組全体で使ったフリップは全部で88枚。バカリズムが自らとタブレットを使って描き上げた。

「最後のフリップでボケるのは、バカリズムさんの“大喜利力”。元々、大喜利力がすごい方で、作っていく内に、その部分が増えていく。これだったら、これも面白いとネタが増えていきました。『特化スポーツ』というテーマで、相撲の塩合戦の絵を描いたところから、ゴルフの砂合戦のネタが生まれました。ネタが増えて大変になりましたが、そこは大喜利力と画力で頑張ってくれました」と振り返った。

大爆笑を取るのではなく、シュールなネタで「なるほど」と笑いを誘うのがバカリズムの基本。MCとして番組を仕切ることは、今まであまりなかった。

「1人で誰とも絡まずに完成したものを作る能力はすごい、ピカ一の天才です。それがMCをやることに、新しい可能性を見いだしています。『特化雑誌』というテーマで。カラス雑誌の編集長との絡みをあえてやろうと決まったのは、収録の2日間です」。

ゲストは女優大地真央(62)、お笑いタレント伊集院光(50)、そしてバラエティーではなじみのないシンガー・ソングライターの高橋優(34)。

「予想外の展開で、大地さんは“カラス映え”がすごい。高橋さんは、あまりバラエティーに出たことのない方でしたが、まさかのいい味を出していただきました(笑い)。伊集院さんは大喜利というものをしっかりとできる方。そこに他の人たちが乗っかって行く形になりました」

4月に第1弾、そして8月に第2弾。レギュラー化もにらんでいる。

「ぜひともやってみたいですね。“バカリズムの1人フリップショー”と言う形だけでは、どこか体力的に限界があると思っていましたが、それだけじゃない。『特化スポーツ』のネタで、VTRで面白い物を作れた、でも彼は、それをフリップ芸の中の一環にしてくれるんです。だから、フリップからスタートしているネタと、違うところからスタートしてフリップというコーティングをしているネタがある」。

フジテレビは今年に入ってから、長きにわたって親しまれた「めちゃ×2イケてるっ!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」を終了させた。バラエティーの作り手として、新しいものを求められている。

「バラエティーを作る上で気をつけているのは、1人の人間が最初に決めきったことをやっていると、限界が来るということ。ある程度の枠を作ってやっていく。今回も、2回目をやってみたら『こんなこともできるんだ』という発見があった。1人の人間以外の能力が入ってくるので、番組が広がってくる。今回も、4月にやった1回目より確実に広がっていると思いますね」と自信を見せる。

特徴的なのは番組のスタジオセット。オフィスの廊下の狭いセットにMCもゲストも“閉じこめ”られる。MCのバカリズムの後では、それをスルー(無視)したオフィスの人間たちが忙しく歩き回っている。

「あのセットは経費削減です(笑い)。初めは深夜番なので、有り物のセットを使った。僕のこだわりとして、狭いところでやりたいと思っていた。『東進ハイスクール』のビデオ授業のセットでやりたいと思っていたんです。後の人間がMCをスルーするのは、テーマがスルーだから、やっていること(番組収録)もスルーされるのが面白いと思ったから。1回目の時は、フリップを出しているときも後を歩いてもらったけど、編集の時に邪魔かなとも思ったんで、今回はなしにしました」。

天才芸人のシュールな発想が画になり、それをテレビ番組として作り上げていく。

竹内GDは「それこそ、僕の一番の腕の見せどころ(笑い)。お笑いライブでは、できなことをやる、ベタなことを、バカリズムという才能に、どう融合させるか見てください。バカリズムのフリップ芸は、どこか全部、小ばかにしている(笑い)。陰口をたたいている感じの時の画なんかメチャメチャ面白い。フリップ芸のさらに先でボケて笑いを生んでいる」。

バラエティー一筋で、「とんねるずのみなさんのおかげでした」「ワイドナショー」「IPPONNグランプリ」「人志松本のすべらない話」などの演出を担当してきた。今は「27時間テレビ」以外は、全部外れた。

「新しいことをしろという会社の命令かなと思いつつ、何もやることがないという危機(笑い)。バラエティーの作り方は、時代によって違うと思うんですけど、面白いこと笑えることを“わざと入れなきゃいけないな”と思っています。今のテレビ界は報道、情報、バラエティーがボーダーレスになってきている。だからこそ『面白(おもしろ)』は絶対にあった方がいい。それがフジテレビだと思う。そこは大事にしています」。

新しい時代のバラエティーの作り手だ。

◆竹内誠(たけうち・まこと)1971年(昭46)年9月22日、神戸生まれ。フジテレビ編成局制作センター第二制作室ゼネラルディレクター。神戸大時代は体育会系サッカー部でプレーしながら司法試験を目指すが、96年に毎日放送に入社してバラエティー担当に。「ジャングルTV~タモリの法則~」「学校へ行こう!」「ダウンタウン・セブン」「世界バリバリ★バリュー」05年にフジテレビ入社。