上方林家一門の林家菊丸(44)が31日、大阪市北区の上方落語協会会館で、襲名後4回目の独演会(10月10日、天満天神繁昌亭)を発表し、席上で、来年1月に脳梗塞でリハビリ中の師匠、一門総帥の林家染丸(68)の「古希の会」(繁昌亭)を企画していることを明かした。染丸も出演に前向きだという。

三味線も手がけ、上方独特のはめもの(鳴り物)を小粋に扱い、上方落語家の異才として一門をけん引してきた染丸は、12年以降、3度脳梗塞に見舞われ、リハビリを重ねている。

菊丸は、師匠染丸の近況について「この猛暑はまいってますね。さすがに。どうしても、家にいるので、外とのつながりがなくなって、すっかりテレビっ子になってます」と明かした。

その染丸は最近、星野源にはまり、さらに、スポーツにはもともと興味はなかったが、夏の高校野球で決勝まで進出した金足農には大興奮。「1戦目ぐらいから、これ、優勝するで」と、弟子たちに“予告”していたという。言葉通りに決勝へ進み、惜しくも大阪桐蔭に敗れたが、染丸は満足した様子だったそうだ。

上方ではいずれも故人の6代目笑福亭松鶴、3代目桂米朝、3代目桂春団治、5代目桂文枝の4人が、戦後の落語を復興させた「上方四天王」とたたえられ、江戸とは違って「林家」を名乗る一門は染丸門下だけ。兄弟子の急死などから、30代で一門総帥に就いた染丸だけに、強者に立ち向かう姿に心を打たれたようだ。

菊丸によると、古希の会は来年1月に繁昌亭で開催予定で、染丸も「乗り気になってくれている」という。自身もそんな師匠の気概を受け継ぎ、10月の独演会では、先代菊丸が明治時代に作った「吉野狐」に挑む。

キツネが人に化けて恩返しをする人情ばなしで、歌舞伎作品などをモチーフに創作されており、近年、ほぼ高座にかけられていなかった。

菊丸は13年の襲名直前から、「せっかくなら先代の作られたものを語り継ぎたい」と稽古に取り組み、すでに「5回ほど」高座にかけている。

「上方らしいはめものをふんだんに使って、新しいネタとして、時間をかけてメジャーにし、世に送り出していきたい」と言い、上方林家の一門として、師匠譲りの気概を見せていた。