女優松原智恵子(73)とテレビリポーターで俳優も務める阿部祐二(60)が3日、グランフロント大阪・ナレッジシアターで行われた朗読劇「遠き夏の日」の公演後に取材会を開いた。原作の石田信之氏が監修を務め、終戦間近の鹿児島を舞台にした若い男女の恋物語。

長い女優人生で朗読劇初挑戦となった松原は「演じていても声というのは、形があるもので付いてくる」と普段の演技でも声は大切だと説明。「声だけでもこんなに伝わるんだ、伝えられるんだということが分かってきた」と手応えを感じていた。

終戦の年に生まれた松原は戦争について「今まであったことを伝えていかなければならない。絶対これから起こしてはいけない」。今年8月には事務所の先輩で、戦時中を生きた津川雅彦さんが亡くなった。来月には共演も決まっていたと明かし、「信じられない」と驚きを隠せない。戦争を経験した世代が少なくなる中で、「今までは上がいるからという安心があった。津川さんに何でも聞けばいいと思っていました。だんだん私が一番上の年齢になってきましたね」と、これからは自身が伝え役を担っていく意志を語った。

共演の阿部は松原の朗読を聞いて「1行語りを入れただけで全ての情景が浮かんでくる」とそのすごみを話す。「一流の演者というのは声だけで十分。松原さんの劇場になっています」と大先輩を絶賛した。

戦争については「この現実に向き合えよというメッセージ」と今公演の意味合いを示し、「ぜひ若者にいっぱい聞きに来て欲しい」。この舞台が過去を知る良い機会になることを願っていた。