女優吉永小百合(73)が21日、長野県上田市で、同市にある第2次世界大戦で亡くなった画学生の絵画を展示する美術館「無言館」の存続を訴えるチャリティー朗読コンサート「『無言館』よ、いつまでも」に出演した。無言館は、吉永と公私ともに親しく15日に亡くなった女優樹木希林さん(享年75)とも縁があった。吉永は涙ながらに希林さんの思い出を語った。

吉永は05年に都内で開かれた所蔵品展で無言館のことを知り、今年6月に上田市にある同館を訪れた。壇上で吉永は「私よりももっと前に無言館に行った、私の大切な人がいます。樹木希林さんです」と目に涙をため、声を詰まらせた。

希林さんが2年前に同館で行われた成人式に出席していたことを紹介した吉永。希林さんと無言館の縁を知ったのは、希林さんが亡くなった後だったという。「彼女は『私はそういうこととは関係ないのよ』という感じでしたが、映画『あん』に出演された時、ハンセン病の元患者の方々のために上映会をずいぶんやって、出掛けていました。お体の具合がそんなに良くない時でしたから、すごい人だと思います」と話した。

そして「まだその辺で見ているかもしれないので、彼女に代わってしっかりやろうと思います」と、30年以上続けている原爆詩の朗読をはじめ、平和関連活動への意欲を口にした。無言館館主の窪島誠一郎氏へは「希林さんのためにも続けましょう!」と呼び掛けた。

チャリティーコンサートは吉永が企画したが、その過程でも希林さんと無言館とのつながりは知らなかった。終了後、吉永は「偶然なんですよね。そういう話は全然してなくて」と驚いた。希林さんについて「何げなく、大事な人助けとか平和に対すること、ヒョイとやれちゃう」と、あらためて尊敬を口にした。コンサートの開催が、希林さんが亡くなった直後になったことについては「やっぱりその辺にいるんですよ。ちゃんとしないと、何やってんの? と言われちゃう」と、自分に言い聞かせた。

吉永と希林さんはドラマ、映画「夢千代日記」などで共演している。数え切れないほどの思い出がある親友と言える関係だ。希林さんが亡くなった時は「思い出があり過ぎて、今は言葉が出ません。ごめんなさい」と短くコメントするのが精いっぱいだったが、吉永は希林さんゆかりの地で故人を悼むことで、さまざまな思いを新たにしたようだった。【小林千穂】

▼無言館は、戦没画学生の絵画や遺品を集めて展示している。97年の開館当初は年間10万人が訪れたが年々減少、近年は3万8000人ほどに落ち込んでいる。絵画修復や保存の難しさもあって、存続の危機にある。チャリティーコンサートでは、吉永、ギタリスト村治佳織らが出演し、吉永は窪島館主の詩や原爆詩などを朗読した。