昨年2月に初期の乳がんと公表し休業した藤山直美(59)の復帰舞台「おもろい女」(29日まで)が8日、東京・日比谷のシアタークリエで初日を迎えた。

いつもの「藤山直美」が帰ってきた。乳がんと判明後、予定した舞台を降板し、自宅療養していた。この日は1年11カ月ぶりの舞台だが、病後を感じさせない演技を見せた。伝説の漫才師ミスワカナを主人公にした「おもろい女」は故森光子さんから継承し、15年に初挑戦した。

長期療養で3年前よりスリムになった藤山は、縁側から飛び降りたり、ダンスも見せるなど躍動。たっぷり笑わせて泣かせる自在の演技で、満員の観客を引きつけた。ワカナが36歳で亡くなるラストで幕が下りると、大きな拍手が鳴りやまず、カーテンコールは3分も続いた。

終演後、藤山は「やっぱり疲れました。よる年波もあって、体力は落ちてるし、まだ五感の反応が遅い。それが戻ってきたらと思います。同じラインじゃなく、下がったところから始まったと思います」と冷静に分析した。演出の配慮で「ちょっと水を飲んだり、足を休ませたりできた。何より共演の皆さんのおかげで安心してやらせていただきました」と感謝した。共演の渡辺いっけいも「直美さんを待っていたというお客様の圧を感じて、疲れました」と、復帰を待望した観客の思いを実感した。

稽古は1カ月かけた。「今もちゃんと定期検診を受けて、お薬も飲んでいます。1年11カ月での復帰は、思ったよりも早く上がれたと思います」。東京公演後、12月2日まで8都市での地方公演が続く。「この日の拍手は12月2日まで、体を大事にして頑張れよ、という拍手だと思います。お客様に喜んでもらえるよう、みんなで同じ方向を見て芝居したい」。最後は座長としての責任を吐露した。【林尚之】