華麗なる転身に驚いた人も多かっただろう。NHK解説委員を務め「あさイチ」で“ヤナギー”と呼ばれた柳沢秀夫氏(65)が先月で退局し、今月からテレビ朝日系情報番組「ワイド!スクランブル」(月~金曜、午前10時25分)に水、金曜のコメンテーターとして出演、ダジャレを交えた分かりやすい解説がうけている。このほど日刊スポーツのインタビューに応じ、現場主義を貫く決意を親しみやすい笑顔で話した。

冒頭、柳沢氏は「出来たてほやほや」と満面の笑みで名刺を差し出してくれた。名前の横に今月から所属した大手芸能事務所「ホリプロ」の名が書いてある。

記者出身だがNHKではキャスターを経験。今月3日には「ワイド-」で民放初出演した。新しいことを始める度に戸惑いはあるが「原点は、もっともっと知らない世界があるんじゃないかってこと」。退局後を考えた時「もう1度新人に戻ったような状況に自分を置いて、何が大切なのかを現場に戻ることで考えたいという気持ちがあった」。

「いなかで草むしり」も浮かんだが「そこに安住しちゃうと、立ち上がって1歩踏み出すのはきつくなる」と思い直した。ホリプロへの所属は家族の誰にも相談しなかった。「亭主関白なんです。『ならぬものはならぬ』と会津のしきたりに従って」と地元会津愛をチラリと見せ笑った。

民放初出演は「緊張」のひと言。「スタジオに足を踏み入れた時、僕が知らない空気感だなって。自分が何言ったのかも記憶にない(笑い)」。驚きつつも記者の目で冷静に現場を見つめている。「フレッシュさやバイタリティーがある。ものを作る現場の勢いの出方、違う筋肉を使う部分があるのかな」。「ワイド-」では政治や事件事故、芸能まで多様なテーマを扱うが「こういう切り口があるんだとか、これをこのタイミングで扱うんだとか、記者を始めた時の新鮮さがある」と好奇心は尽きない。

記者としては地元福島の原発問題、駆け出しの頃赴任した沖縄を取り巻く普天間移設問題を取材したいと考えている。「今向き合わなければいけない現場に自分が赴いて、自分ができることを探しながら記者として仕事をしたい」と話す。

NHKの先輩、ジャーナリスト池上彰氏(68)を尊敬の念を持って見ている。「でも、テレビの世界に2人の池上彰はいらないと思っています」。“記者は黒子”が持論だ。「僕の場合はメモ帳と鉛筆で現場に走って、集められる言葉を自分の手段を使って伝えていくのが仕事」と「生涯一記者」を心に決めている。

ホリプロの先輩、和田アキ子にはあいさつを済ませた。ステージを鑑賞し「アッコさんの厚みに圧倒されました」。同事務所に所属し、NHK大河「八重の桜」に主演した綾瀬はるかとは毎年「会津まつり」で対面している。美人にはめっぽう弱く「(心臓が)どっかんどっかんで」と慣れることはない。「でも、近づく時に『同じ事務所です』って話題ができました」とうれしそうに笑った。

「あさイチ」時代は“ダジャレおじさん”としても人気だった。大手芸能事務所所属について聞くと「夢にも思わなかったですよ」。続けて「僕はどう見たって芸がノーですから」と、ちゃめっ気たっぷりの笑みを浮かべた。【遠藤尚子】

◆柳沢秀夫(やなぎさわ・ひでお)1953年(昭28)9月27日、福島県生まれ。早大政経学部卒。77年NHKに入局し横浜、沖縄放送局の記者を経て84年から国際部。バンコク、マニラ特派員、カイロ支局長を歴任した。00年解説委員に就任、12年同委員長。「ニュースウオッチ9」「あさイチ」にキャスターとして出演。17年から会津出身者の親睦会「会津会」第8代会長を務める。趣味はアマチュア無線。