米国の上院・下院の中間選挙が、各局の日本のニュース番組でもトップニュース扱いで報じられています。トランプ大統領が、強いキャラクターの持ち主だということもありますが、典型的な劇場型の政治。ただ、これはより多くの人々に政治に興味を持たせる、投票に足を運ばせるという意味では、ポジティブなことだと思います。

芸能記者としては、現地で、歌手のテイラー・スイフトさんが民主党の支持を表明したり、黒人ラップ歌手カニエ・ウエストが大統領官邸でトランプ大統領に会ったりしたニュースが、印象的でした。ウエストは、その後、最終的に「俺の信じていないメッセージを広めるために使われたことに気付いた。だから、政治とは距離を置き、クリエーティブことに完全に専念する」とツイートしました。

いずれにしても、認知度が高くて影響力の大きい芸能人が、当たり前のように政治的発言をして、どこかの政党を応援するという土壌が、とてもうらやましく感じます。米国には、いまだ差別的な価値観が存在しますし、今回の共和党と民主党の方針などは、とても極端で、まさに国を「分断」するぐらいの差異です。

ただ、それは、裏を返せば、1人1人が言いたいことをいえる環境だともいえます。それに比べて、日本はどうでしょうか。

街の居酒屋で、政治の話題で、主張をぶつけ合う光景は、ほとんど見られません。芸能人たちは、スポンサーや出演番組などを気にして、政治的な発言は一切しません。本音が、どこにも見えない、いや、言えない世の中のままです。

そういう意味で、日本は、我々日本人が思っているほど、成熟した社会では、いまだないのだと思います。

そんな中で、かねて、プロサッカー本田圭佑選手だけは、政治的な発言や、国民の中で見解が二分するような社会的ニュースに対して、ツイッターなどで、自らの見解をつぶやいています。最近では、プロ野球ダルビッシュ有投手も、自らの考えを表明するようになっています。先日も、戦場ジャーナリスト安田純平さんの「自己責任論」に対する、見解をツイートして、一般人と激論を交わしていました。

個人的には、すごくすてきなことだと思います。その主張内容に共感できるとかできないとかではなくて、意見を言える姿勢を、素晴らしく感じています。

本田、ダルビッシュの両選手は、自らの体1つで、海外に出て勝負をしているからかもしれません。「日本人」というだけで守られるわけではない環境で生活するから、周囲の目を気にして本音を言わないままだと、埋もれてしまう。本当に自分らしく生き抜くことができなくなるからなのかもしれません。

日本は、島国であるがゆえに、独自に安定的な国づくりができている側面はありますが、いまだにきれいごとや体裁ばかりを気にして、自由に意見をぶつけ合うことから、背を向けがちな気がしています。

とはいえ、急速にSNSが普及し、情報を受け取り方、発信方が、根本から変化し始めているので、10年後は、米国のようになっている…かも? 芸能人も一般人も、自由闊達(かったつ)に意見が言い合える社会になっていてほしいと、心の底から願っています。