松竹芸能は19日、大阪市内で、今年7月に閉館した「道頓堀角座」に代わる新劇場として、来年1月1日に、道頓堀から数キロ北上した同じミナミの心斎橋に「心斎橋角座」をオープンさせると発表した。

道頓堀角座は契約期間満了で、今年7月末に閉館。松竹芸能の関根康社長は「落語、漫才の演芸はもちろん、OSK(日本歌劇団)、アイドル、サブカルチャーと多様なエンターテインメントを生み出し、関西を盛り上げたい」と語った。

場所は東心斎橋1丁目。客席は座数120人と、スタンディングなら最大200人を収容可能だといい、ジャンルにこだわらずコンテンツを発信。1月1日の開館記念公演は落語寄席などを予定し、桂福団治(78)らが出演する。

角座は、江戸時代から「浪花(なにわ)座」「中座」「朝日座」「弁天座」とともに「道頓堀5座」のひとつとして親しまれ、芝居・演芸の街、道頓堀の象徴のひとつとして親しまれてきた。かしまし娘ら、昭和の上方演芸を彩る芸人が出演する本拠地だったが、84年に閉館した。

その後、松竹芸能は「浪花座」「中座」などで興行を打っていたが、5座すべてが消滅。04年には「B1角座」として、角座ビル地階に復活させたが、08年5月に再び閉館。13年7月「道頓堀角座」として、5年ぶりに「角座」を開いた。

今回、心斎橋へまた「角座」を開き、しかも10年の長期契約。関根社長は「角座を守るというより、角座(の知名度)を生かして、お客さまとのコミュニケーションをとり、利用していきたい」と話す。

10年での契約にも「時代に対応できるよう、多様性を持たせるため、スタンディングも可能にした」と説明。M-1グランプリをはじめ、各種賞レースでは、常設劇場を複数持つライバル吉本興業の芸人に先行される状況が続いているが、劇場を拠点に、エンターテインメント発信企業としての存在感を増していく考えもある。

これについて、福団治は「角座というのは、わが体の一部。魂のような気がする。芸人にとって、ホームグラウンドは一番必要なもの」と言い、角座の復活を心から喜んだ。

一方で、新劇場は地下であることから、発表会見に同席していた漫才師酒井くにお(70)は「私は(10年契約は)もちませんから、いいですけど、なるべくなら明るいところがよかった」。ジョークをまじえ、新劇場の誕生を歓迎すると、相方の酒井とおる(67)も「芸人は包丁と一緒。使わんかったらさびてしまいます。相方なんか刃こぼれしてますから」と話していた。

1月以降の詳細プログラムは近く発表される。