酒気帯び運転でひき逃げしたとして、自動車運転処罰法違反(過失傷害)などの罪で起訴された元モーニング娘。吉沢ひとみ被告(33)の判決公判が11月30日、東京地裁で開かれ、懲役2年、執行猶予5年の有罪判決が言い渡された。異例の長い猶予期間となったが、佐藤卓生裁判官は「反省を深める時間が必要」と説明した。

吉沢被告は前日29日の初公判と同様、グレーのスカートスーツと白シャツ姿で入廷。裁判官の説明を聞いている間、終始神妙な面持ちで、膝の上に両手を重ねて座っていた。傍聴席からは、IT企業経営者の夫らが見守っていた。

裁判官は「被告の呼気からは、他の酒気帯びの事案に比べても高濃度のアルコールが検出された。被害者2名も顔面に傷痕が残るなど軽くないけがを負った。被害者を救護しなかった」と吉沢被告の犯行について列挙し、「刑事責任は相当に重いものがあると言わざるをえない」と指摘した。

一方で「事故後に自ら110番通報して現場に戻ったことは、責任の大きさを自覚した行為」とし、被害者2人と示談が成立していることや、吉沢被告が被害者に謝罪し反省していることもあげ、執行猶予つきの判決となったと説明した。

検察側の求刑は懲役2年だった。実刑は回避したが、執行猶予5年は通常よりも長く、重い判決となった。裁判官は「犯行対応はいずれも悪質で、軽視できない事案。さらに反省を深める時間が必要で、執行猶予期間は通常より長い5年とする」と述べた。

判決によると吉沢被告は今年9月6日午前7時ごろ、東京都中野区内で酒気帯びの状態で乗用車を運転し時速86キロで赤信号を無視。横断歩道を歩行中の男女2人に軽傷を負わせそのまま逃げた。警視庁中野署に逮捕され、保釈保証金300万円を納付し同27日に保釈。翌28日、芸能界からの引退を発表した。

判決公判前日に行われた初公判では、証人出廷した夫が「(酒量が)急激に減っています」と話し、保釈後も飲酒を続けていたことが明らかになっていた。

この日の判決公判で、裁判官が執行猶予について説明する中で「次に過ちを犯した際は、執行猶予はつかないだろう」と話すと、吉沢被告はぎゅっと唇をかみしめ、わずかにうなずいた。さらに「執行猶予が明けた後も、このような裁判に関わるようなことがないように生活してもらいたいと思っています」と声を掛けられ、吉沢被告は裁判官のほうを見て「はい」とうなずき、はなをすすった。【横山慧】