第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が3日、決定した。是枝裕和監督(56)は新作撮影中の仏パリで作品賞受賞を知った。

「万引き家族」は日本人監督として21年ぶりにカンヌ映画祭最高賞のパルムドールに輝き、今回も「集大成」と評価された。

「子どもの演出を考えながら家族を題材にしてから10年を超えました。集大成といわれるほど年を取ってはいませんが、いままでのいろいろが結実した作品だと思っています。だから、この賞はものすごくうれしい」。常連組に安藤サクラ、松岡茉優(23)と新顔が加わった。「安藤さんはそこにポンと置いたんじゃなくて、地面から生えているような存在感がすごい」。

樹木希林さんが重しになった。「ちょっとでも演出に隙があるとすぐに指摘される。監督と女優というよりも、いつもこちらが見られている。撮影中はとてもお元気だったので、今でも信じられない」。

パルムドール受賞効果で、撮影中の「La Verite」(19年公開)にはカトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュと仏大物が顔をそろえた。「演劇理論がしっかりしているし、優秀な通訳のおかげで意図がちゃんと伝わる。ギャップはありません」デビューから23年。「万引き-」は大きな節目になった。【相原斎】

◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京生まれ。「遠くへ行きたい」などのテレビ番組を手掛けた後、95年「幻の光」で監督デビュー。13年「そして父になる」がカンヌ審査員賞。

◆万引き家族 信代(安藤)治(リリー・フランキー)夫婦、信代の妹亜紀(松岡茉優)は、年金目当てで治の母初枝(樹木希林)の家で暮らしている。万引で生計を補う治と息子の祥太(城桧吏)は、凍えていた少女(佐々木みゆ)を連れ帰る。是枝裕和監督。

◆作品賞・選考経過 「万引き家族」が「カメラを止めるな!」などを退け、最初の投票で過半数を獲得した。「是枝ワールド+社会性がブレンドした」(福島瑞穂氏)、「トータルバランスがすばらしい作品」と、パルムドール受賞作の総合力の高さを評価する声が多く上がった。