タレントつるの剛士(43)が、日本を代表する温泉の「再生企画」の先頭に立つ。9日、愛媛県松山市の道後温泉本館で「道後 REBORN プロジェクト」の制作発表に出席。野志克仁松山市長、ポニーキャニオン吉村隆代表取締役社長と記者会見に臨んだ。

明治時代に建造された道後温泉本館は、来年で築125年の節目を迎える。由緒ある温泉の本拠地を次世代まで守り続ける目的で、来年1月15日から7年間の修復工事に入る。

同市は修理を進める一方で温泉営業を続ける考えだ。今後も観光客を招くため、手塚治虫プロダクションとコラボレーションすることを発表。道後温泉を「時代を超えて人々を癒やし続ける永遠の命の泉」と捉え、永遠の生命の象徴である「火の鳥 道後温泉編」のオリジナルアニメーションを制作する。つるのはアニメの中で大国主命(オオクニヌシノミコト)役で声優を務める。「歴史ある道後温泉本館の生まれ変わりと、長い長い未来を作っていく分岐点に携わることはありがたいことです」と感慨深げに語った。

明治の和風建築として重要文化財である公衆浴場だが、営業しながら保存工事する取り組みは全国初。夏目漱石の「坊っちゃん」の舞台としても知られる現在の本館の姿を継承しながら、この期間にしか見られないさまざまな企画を展開する。プロジェクトの受託事業者であるポニーキャニオンの吉村隆社長は「『火の鳥』は道後温泉が飛躍するにふさわしいキャラクター。道後温泉が変わらず発展していくため、エンタメのノウハウを生かして地域を活性化させたい」と企画意図を説明した。

オリジナルアニメーション制作のほか、工事中の壁面装飾、ポスターなどのオリジナルグッズの開発も行われる。工事期間中の本館の姿をリアルタイムで伝えるライブカメラも設置し、ポニーキャニオン・YouTubeチャンネルで24時間配信することも決まった。

つるのは「アニメ声優の経験はほとんどありません。自分の中でも記憶に残る仕事になると思う。一生懸命に演じたい。道後温泉の新しい歴史をつくりたい」と抱負を語った。

平成最後の年にスタートする道後温泉の保存修理工事。時代の転換点を迎える日本で「文化の再生」への1歩を踏み出す。

◆道後温泉 愛媛県松山市にあり、泉質はアルカリ性単純温泉。筋肉痛や神経痛、疲労回復などに効用がある。日本最古3000年の歴史を誇り、万葉集など史実にも数多く登場。夏目漱石や正岡子規らにも愛された。夏目漱石は松山中学の教師として赴任したときに利用し、小説「坊っちゃん」の中で絶賛。温泉街のシンボル的存在が道後温泉本館で、本館は1894年(明27)建立。1994年(平6)には近代和風建築として、初めて国の重要文化財に指定された。同本館には「坊っちゃんの間」や皇族専用浴室もある。