日刊スポーツ映画大賞で白石和彌監督(43)が監督賞を受賞した。受賞の対象作品は「狐狼の血」「止められるか、俺たちを」「サニー」の3作品だが、受賞の取材では「狐狼の血」についての話が大半だった。

広島のヤクザの抗争と、組織に食い込む刑事の姿を描いた映画で、かつての東映実録映画をほうふつとさせるヤクザぶりが強い印象を残した。白石監督はVシネマで助監督をやっていた時に、ヤクザものを撮った経験があったが、「ラストはいつも抗争場面で、血のりで赤くなった服を着たまま、夜明けの街を歩いていると、必ず、警官から職務質問を受けた。だから、ヤクザものにいい思い出はなくて、好きか嫌いかと聞かれたら、嫌いだった」という。

しかし、今回の映画はえぐいシーン満載で、「やってみると、面白かった」。北海道の高校の1年後輩にあたる音尾琢真は、イチモツに真珠を埋め込む、えげつないヤクザ役を喜々として演じたし、原作にない養豚場のシーンでは冒頭で豚のふんを食わせる演出もあった。「『このシーンがなかったら、もう少し興収が上がった』と言われた」という。

中村獅童は新聞記者役で出演したが、撮影後、なぜか怒っていたという。「『なぜヤクザ役じゃなかったんだ』って。今度はヤクザ役で出たいと、言ってました」。今回の映画に出ていない若手からも「今度撮る時は、ヤクザ役で出たい」と、出演希望が多かったという。「みんな、こんな映画を待っていたんですよね」と白石監督。来年にも続編を撮る予定という。