シンガー・ソングライターbirdが大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、通算11枚目となる最新アルバム『波形』(3月20日発売)をPRした。4年ぶりの新譜となった本作は、ライブの合間を縫うように時間をつくり、納得のいくまで楽曲と向き合ったという。「特に日本語の響きや言葉のリズムから楽曲をどこまで試せるのか、という思いで作った」。言葉が歌に、曲になっていく過程を楽しめる1枚に仕上がった。

アルバムタイトルの「波形」とは、音を視覚化したもので、空気の振動の速さや形で音程や音色が異なるという。「毎日音楽に携わる者にとって、波形は毎日触れるモノ。また今の時代、例えばスマホでも簡単に録音できるので、誰にとっても身近なモノになっていて興味深い」と話す。さまざまな楽器が生み出す音の「波形」に圧倒的なボーカルを重ねた。

1999年3月にデビューし、ソウルフルな歌声が多くのファンの支持を集めた。それから20年のキャリアの中で多くの経験を積んだが、「やっぱり歌が好きなんだなあ」と実感する。例えば本作には「雪のささやき」という楽曲を収録。birdにとって初の冬ソングだという。「私は夏が好きなので、冬の曲を作ったことがなかった。それが、北海道でライブを行ったとき、訪れた冬の弟子屈(てしかが)町の銀世界を見て心奪われた。この世界を曲で表現してみたいと。やっぱり音楽なんです」。プライベートでも全国のタワーを巡って、1人でスタンプ集めに出掛けると言う。birdの全方向への興味と新たな景色との出会いが音楽の世界観を広げるようだ。

「曲作りはイメージを大切にする」と言うように、風景を写真に撮って、そのイメージを言葉で表現する。言葉がメロディーに乗るか、または言葉に合わせてメロディーを変えるか。言葉の「はまり具合」に試行錯誤しながら、自分の世界観を音楽に変える作業は「子供を育てるような感覚。楽曲の完成は、子供が巣立つよう」と話す。何より「聴く人が気持ちよくなるような音楽作りにこだわってきた」。本作にも、研ぎ澄まされた10作品が収録された。

前作の『Lush』に引き続き、プロデュースを「現代の音の名匠」冨田ラボこと冨田恵一に依頼。楽曲をKASHIF(PPP)、江﨑文武(WONK)、角田隆太(ものんくる)ら注目の音楽家に提供してもらい、bird自身の作詞作曲楽曲も収録した。「冨田さんは自分のことをよく知ってくれているので、ストレスなく作業に集中できる。例えば、3曲目『記憶のソリチュード』では私の音域がGかAくらいが特に良いと、そのキーで作曲してくれたのですが、本当に歌いやすかった」。

20周年の今年は「いろいろな企画を考えている」と笑うが、詳細はこれから発表していくという。節目の1年、まずはこのアルバムを引っ提げて、東阪で記念ライブを開催する。東京は4月19日にビルボードライブ東京で18時半と21時半の2回公演。大阪は5月2日にビルボードライブ大阪で16時半と19時半の2回公演。詳細は公式サイト(http://www.bird-watch.net/)を参照。