元宝塚歌劇団の星組トップ娘役、妃海風(ひなみ・ふう=30)が5月23日に、大阪市北区のビルボードライブ大阪で、ライブ「マジック・オブ・ジャズ」を行う。

テーマはジャズ。「しっとり聞くだけじゃなく、ビッグバンド寄りのノリのいいジャズなど、私らしい、明るく盛り上がる曲もあります」とアピールした。

退団から約2年半。「いや、変わりましたよ~。考え方もずいぶん。少し力が抜けたと思います」。邪気のない笑顔は不変でも、持ち前の奔放さに磨きがかかったようだ。

男役の場合、私服から歩き方まで女性に“戻る”のにひと苦労。娘役は女性を演じておりそれがない-と思いがちだが、実は違う。

「宝塚の男役も素顔は女性。だからより、隣にいる娘役は、女性らしくあろうと意識して作りあげていた。それが宝塚の美学」

妃海の場合、もともと地声が低く、普段の会話から「1段階、ぐっと上げていた」。疲れていても「今日も元気です」と言い、稽古場を盛り上げるのが彼女だったが、自然体を受け入れられるようになった。

そんな彼女が臨む今ライブのテーマはジャズだが、宝塚時代のファンも意識し、宝塚時代の出演作からジャズ調にアレンジした楽曲もある。それ以外にも「前奏を聴いて、知ってる! って曲が多い」。客にも肩ひじを張らせない。

会場は、ビルボードライブ大阪。大人が音楽を楽しむ空間だ。この会場ではかつて、相手役を務めた元星組トップの北翔海莉(ほくしょう・かいり)や、専科の轟悠(とどろき・ゆう)もライブを行った。

妃海は両公演ともに鑑賞。会場の雰囲気、客席との距離の近さに「すごく興奮した」と振り返る。

「誰かと、おいしい食事とお酒、いい音楽を味わうって最高のマリアージュ。特別な夜-な感じがする。その幸せを一緒に味わってもらえたらうれしい」

今回、妃海自身が会場のカクテルを2種類プロデュースした。

宝塚歌劇団では、各スターがファンとふれあいを楽しむ「お茶会」と呼ばれる交流の場があり、退団後も同様の交流を続ける人もいる。妃海は、在団中から、人を喜ばせることが大好きで、その「お茶会」でも「4~5着は着るのが私のルールなんですよ。私が見ている方でも、衣装の数が多い方が好き」と笑う。

だが、今回は、衣装を「1着で通してみようか」と考えている。

「いつもは、べらぼうにしゃべって歌って着替えて、ドタバタ。今回はゆとりを持って、大人の落ち着きをお見せすることに挑戦したいと思っています」

いつもとは違う「妃海風」を見せたいという。

4月12日に誕生日を迎え、30代に入った。落ち着いたのか-と思い、30代を迎えた感想を聞くと「かっこいい40代になるためのスタートです」と、ちゃめっ気たっぷりに返してきた。

「40代に向けて英会話とアコースティックギター、始めたんですよ。たき火の近くでギターかき鳴らして、ポニーテールをざっくり結んで-そんな人になりたいんです。あと10年あったらなれますよね」

旺盛な好奇心、サービス精神が「妃海風」の原点。そこはまったく変わらないが、それゆえ、進化も続いていく。【村上久美子】