お笑いコンビ、キングコングの西野亮広(38)が「毎日広告デザイン賞」の広告主参加作品部門でグランプリに当たる「最高賞」を受賞した。

昨年11月16日に毎日新聞朝刊に掲載された広告「西野亮広最新刊『新世界』本日発売」が、165点の候補の中から選ばれた。西野が個人でスペース(全15段)を購入して、コンセプト、デザインのディレクションを行った。一面の西野の横顔に雨のように活字が降っている。活字は著書「新世界」の前文の文章になっている。日本の広告賞で一番長い1931年(昭6)からの歴史を持つ同賞で、タレント、芸人制作の広告作品の受賞は史上初めてだ。

クリエーティブな才能を感じさせる素晴らしい広告なのだが、それより印象深かったのは受賞スピーチでの下ネタの滑りっぷり(笑い)。自身の陰部をドアの郵便受けに突っ込んだストーカーに、住居不法侵入罪が適用されたというシュールなネタで、1000人以上いた出席者を沈黙させたのは、ある意味快挙だった。

近年ではお笑いより、絵本作家、実業家、そして何よりネットでお金を募るクラウドファンディングを世に広めた。そんな西野も、4、5年前からついて回るのは“炎上芸人”の肩書。ネットを開けば、ネット民だけではなく芸人仲間からも糾弾される厳しい状況だった。フジテレビ系「はねるのトびら」(01~12年)の時からのファンだった身としては、寂しい気もした。

そんな思いを一気に変えてくれたのが、16年に発売された絵本「えんとつ町のプペル」だった。素晴らしい作品だった。原画をVRで展示するイベントも行われているが、映画も制作中。大いに期待したい。

現在は本もベストセラー。あのホリエモンこと堀江貴文氏(46)と共著を出し、自著の部数の累計は100万部を超えた。もう立派な文化人だ。それでも、下ネタの流れで、テレビ東京系バラエティー「ゴッドタン」で、劇団ひとりに尻の穴に無理やり指を突っこまれたことを質問すると「しかるべきタイミングで訴えようと思っています。令和は『ゴッドタン』をつぶしに行きます」と、笑いにつなげようと答えてくれるのは素晴らしい。相方のカジサックこと梶原雄太(38)とのキングコングで、いまだに劇場に出続けているものうれしい。

そして何よりすごいのは、写真撮影の時のポーズ。今回も「えんとつ町のプペル」の時も決めのポーズをお願いしたのだが、まさかのピースサイン。今どき、アイドルだってやらない(笑い)。文化人との落差が楽しいお笑い界きってのイケメンの、さらなる化学変化を期待したい。【小谷野俊哉】