吉本興業発祥の大阪芸人の間では、古くは事務所を通さない営業こそが「飯の種」だった時代もある。若手の場合、選ばれて舞台に立っても、1ステージ500円ほど。現在もほぼ同じ。1週間出演しても手取り3000円に満たない。

ギャラの取り分は「本人1割(事務所9割)」からスタート。貢献度によって芸人への“実入り”も変わる。複数のCMに出演し10億円以上稼いでも年収が1000万円の芸人もいた。その分、功労者への配慮が厚い“年功序列”的な面もある。

ベテラン漫才師は「行きつけのスナックが新規で店を出す、知り合いの結婚式の司会とか『直(いわゆる闇営業)』がないと、生活できんかった」と振り返る。長らく、吉本側も「つきあい」による仕事を“黙認”してきた歴史もある。比較的近年でも“事後報告”で、ある程度は容認せざるを得なかったようだ。ただ、相手先が反社会勢力や暴力団関係者は論外ではあるが。

吉本興業所属は約6000人。年収1億円超えの芸人は十数人とみられ、衣装代を引けば「年収マイナス」の芸人すらいる。近年、大阪は不況で営業が減り、裏の仕事も東京で活性化している。ある程度売れると大阪から東京へ行くが、もともと生き残り競争が激しいことから依頼を断る恐怖心も強い。相手先をよく知らずに…といったケースはまだありそうだ。【元吉本担当=村上久美子】