藤山直美主演の舞台「笑う門に福来たる」が東京・新橋演舞場で上演されている。藤山が演じる主人公は吉本せい。所属するタレントが振り込め詐欺グループの忘年会に事務所を通さずに出席した闇営業問題で揺れる吉本興業の創業者で、彼女の半生を描いている。

吉本せいは、夫とともに1912年(大元)に寄席を買収して寄席経営に乗り出し、吉本興業を日本のお笑い界をリードする「お笑いの王国」に育てた立志伝中の人物。2年前にNHK連続テレビ小説「わろてんか」のヒロインのモデルとなったように、これまでも映画、ドラマ、舞台などに度々登場している。

今回の舞台は松竹の製作だが、冒頭に吉本に所属するタレントたちの写真や映像が流され、随所で吉本の歴史も語られるなど、ライバルである吉本へのリスペクトが舞台にあふれている。

そして、吉本せいも「笑いは生きる力」という信念のもと、芸人を愛し、数々の卓抜したアイデアで厳しい寄席経営を乗り切り、戦争で寄席も買収した通天閣も失う逆境をも克服して生きる姿が丁寧に描かれている。

藤山も吉本せいについて「自分のお子さんやご主人を早く亡くされたり、死に別れの多い人。人の悲しさをたくさん持って、その反面で笑いを作られた。何よりも笑いや楽しいことが大好き。大阪の芸人さんを愛し、吉本に人生をささげた人」と話している。そんな吉本せいだからこそ、今の吉本のありようをどう見ているのでしょうか。【林尚之】