先日、NHKで木村文乃(31)主演の土曜ドラマ「サギデカ」(31日スタート、土曜午後9時)の会見を取材していたところ、会場が停電する珍しい事態に遭遇した。停電にも驚いたが、木村の対応力にも驚かされた。

停電が発生したのは会見開始から約10分後、木村が作品について話している時だった。突然照明が落ちると、木村は「おお」と一瞬驚きの声を上げたが、「サプライズでもあるんですかね? 聞いてないですけど」と間髪入れずに続けた。NHK局員も正確な状況を把握できず、取材陣の間にも「会見どうなっちゃうの?」という空気が流れたが、木村は「ちょっと熱く語り過ぎちゃったから、クールダウンしろってことですかね? あはは~」と笑って場を和ませた。

会場の外も停電していることなど、おおかたの状況をつかむまで木村は「今頼りになるのは、皆さんの(フラッシュ)ライトだけです。存分に撮ってください」と笑わせ、「どうしますかね、じゃあ暗い中でもうちょっと話しますか」と撮影の裏話などを話して間をつないだ。

結局復旧は見込めないと判断され、非常灯だけがともる暗闇の中、会見は最後まで行われた。木村は終始笑顔で、特別な状況を楽しんでいるようにも見えた。

会見後、アドリブ力というのか、女優は肝っ玉が据わっている、などと振り返っていると、ふと自分が“暗闇会見”の様子を写真に収めていないことに気付いた。案の定先輩記者から「停電時の写真を出稿せよ」と指示を受けたが、もはやどうにもならない。木村は停電に動揺することなく仕事をしたが、記者はこの非常事態に浮足立っていた。反省しながらその日の原稿を打った。【遠藤尚子】