「日テレに入って、良かった。そう思える仕事の1つです」

拍子抜けするほど、あっさり、しかし力強く、こちらの目を見て答えた。

日刊スポーツの連載「水曜日の女性アナ」のインタビュー取材に答えた笹崎里菜アナウンサー(27)の一言である。

笹崎アナと言えば、15年の入社前、会社に対して訴訟を起こし、その後、和解して入社した騒動で、世間の認知度が上がったアナウンサーだ。

あれから4年。早朝の情報番組「Oha!4 NEWS LIVE」月曜メインキャスターの傍ら、同局のラグビーワールドカップ(W杯)実況班に女性アナでただ1人加入するなど、ここにきて、活躍の場が目立ってきている。

今回はそうしたタイミングでの取材機会となった。その人物像と同時に、紆余(うよ)曲折を経て手にしたアナウンサーという職を、この充実期にどう感じているのか、そうした「今」の答えだけは聞きたいと思っていた。そんなことを考えながら、インタビューではまず、ラグビー実況への取り組みについて聞き始めた。「笹崎アナにとって、ラグビー実況の仕事はどういう位置づけの仕事になりそうですか」。

私の質問に対し、笹崎アナは明確に答えた。それが冒頭に紹介した「日テレに入って、良かった。そう思える仕事の1つです」という言葉だった。

あくまでも、こちらの推測だが、笹崎アナはこの答えを、思いつきでなく、ある程度、準備して取材の場に来ていたように思う。それほどまでに、力のこもったように聞こえた一言だった。

それと同時に、印象的だった入社時の話題を避けるでもなく、引きずるでもない形で、見事に「今」の自分を答えたように思う。

インタビューをスタートさせる前、あいさつを交わした際、笹崎アナは愛想笑いはせず、どちらかというと真顔で、少しばかりの緊張感も感じさせた。ざっくばらんにいろいろなことも聞くスポーツ新聞の取材ということで、少々構えられたのかもしれない。正直こちらも、本音を引き出すには、難儀する取材なのではと覚悟もしていた。

だが実際話してみると、ラグビーの話題では情熱たっぷりに、身ぶり手ぶりを交えて説明した。「日テレ女子アナラグビー部」や、「おはよん」でのラグビー企画を、自ら企画立案していたことには正直驚かされた。これまでの担当番組の思い出を聞くと、中山秀征ら共演者に対しての恩義を熱弁した。その後、両親の話題になると、20代の女性らしく、屈託なく笑った。理路整然として、笑顔や冗談も交えた話術に、気が付けば、すっかり笹崎アナの話に吸い込まれるように1時間が過ぎていた。

記憶に残る言葉は、他にもある。

「どうしてもやらなきゃいけない、という目標が1つできたら、他はあきらめることができる。死ぬ時に後悔したくない、というのがモットーです。(自分が決めたことであれば)他人に何を言われてもいいし、失敗しても、ま、いっか、と思えます」

これから取り組みたい仕事を聞いた時は、こう答えた。

「今は、ラグビーのことを頑張ろうというのが目標で、あんまり先々の目標を立てるタイプじゃなくて、目の前のことを1個ずつやっていくタイプです」

1時間あまりのインタビューで、その人の全てが分かるはずもないが、笹崎アナは常に「今、目の前にあるもの」と、どう向き合うか考える性格なのだろうとは感じられた。

入社時も、ラグビーW杯も、今の自分がすべき選択、努力をした上で、その結果を全力で受け止める覚悟を持っている。その姿勢はきっぷが良く、どこか気持ちいい性格だと素直に感じた。

そうしたラグビー実況への熱意が伝わったのか、日本代表が8強に進んだころには、笹崎アナがリポートをインスタグラムにアップすると、「勝利の女神だ」などとたたえる意見も出てきて、そうした話題がネットニュースでも取り上げられた。

まだ「エースアナウンサー」のだいぶ手前かもしれないが、今回の取材でも、熱い情熱と器の大きさは感じられた。認知度はもともとある。個人的には、ラグビーW杯を経て、さらなる飛躍を期待している。【大井義明】