「第32回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が、11日までに決まった。

松岡茉優(24)が「蜜蜂と遠雷」(石川慶監督)で主演女優賞に輝いた。クラシックの世界で再起をかける天才ピアニストを演じ、その演技力を存分に発揮した。

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受賞の感想を聞くと「小躍りするくらいが一番かわいらしいんでしょうけど…謹んで、お受けいたします」。若き演技派は「今までの31人の主演女優賞の方に恥じない生き方やお芝居をしないといけない」と静かに喜びをかみしめた。

恩田陸氏の同名ベストセラーは、豊かな音楽描写から映像化は不可能と言われていた。大規模公開作品への主演は松岡にとって初めてだったが「それよりも、映像化する気合と覚悟を一緒に背負わなくてはと思いました」と振り返る。

天才少女と呼ばれながら、母の死をきっかけに表舞台を去ったピアニスト、栄伝亜夜を演じた。せりふは少なく、表情で語る場面が多かった。「仲間を作らず、一定期間自分の目の前のものと向き合ってきた部分が共通していた」と、孤高の役柄を演じた映画「ちはやふる」の若宮詩暢やドラマ「問題のあるレストラン」の雨木千佳が生きた。

今作でデビューした共演の鈴鹿央士(19)にも刺激を受けた。未知の才能に震えた半面「私は私で、詩暢ちゃんや千佳ちゃんが教えてくれた気持ちが蓄積してあった」と呼び起こされる気持ちもあった。また「鈴鹿くんが演じた風間塵という役がいつか彼の後ろ盾になると思うと、何だか誇らしいようなうれしいような気持ち」と、姉のような心境ものぞかせた。

敷居が高い印象のクラシックを題材にしたことで、ピアノ奏者から感謝の手紙が届いたという。「蜜蜂-は幸福にもたくさんの人に見てもらえて、『あの作品をよく映像化してくれたね』ってたくさんの人に言ってもらえた」。松岡には映画の意味を感じられた作品でもあった。【遠藤尚子】

▽主演女優賞・選考経過 ノミネート時点でかなりの投票ポイントを集めた松岡茉優を評価する声が多かった。「よこがお」の筒井真理子について「悪女的な役が魅力的で、とても合っていた」(渡辺武信氏)の声も。2回の投票で松岡に決定。

◆蜜蜂と遠雷 ピアノコンクールに参加する4人のピアニストを描いた。母の死でピアノが弾けなくなった亜夜(松岡茉優)、楽器店で働く明石(松坂桃李)、ジュリアード音楽院在学中のマサル(森崎ウィン)、謎の少年塵(鈴鹿央士)。それぞれ刺激し合い、成長していく。石川慶監督。