今年の演劇賞の第1弾となる紀伊国屋演劇賞が17日に発表された。1966年に始まった伝統ある演劇賞で、団体賞は劇団桟敷童子。すみだパークスタジオを拠点に、度肝を抜かれる舞台セットもあって、大好きな劇団だけにうれしかった。個人賞は「ガラスの動物園」のトム役がすばらしかった亀田佳明、クロアチアの4代にわたる女性たちの物語「スリーウインターズ」を繊細に演出した松本祐子の文学座コンビに、村井国夫、広瀬すずらだった。

村井は、団体賞の桟敷童子公演「獣唄」に客演で主演したが、12月7日の終演後、軽い心筋梗塞を発症して入院。以降の公演を降板したが、倒れるまでに見せた演技が評価されての受賞だった。実は倒れた日の公演を見ていて、帰る時に受付に妻の音無美紀子がいたので、あいさつしただけに、降板にはびっくりした。村井は初受賞で、病床で喜んだろうと思う。音無美紀子も主演した舞台「風を打つ」で文化庁芸術祭の演劇部門優秀賞の受賞が26日に発表されたばかりで、夫婦でのダブル受賞となった。

また、驚いたのは広瀬の受賞だった。野田秀樹作・演出の「Q」に出演したが、実はこれが初舞台。21歳という若さでの受賞は快挙だが、初舞台で受賞というのも紀伊国屋演劇賞の50年を超える歴史で初めてだろう。過去に吉田日出子が23歳、加賀まりこは25歳、栗原小巻が26歳で受賞しているが、21歳というは抜き出ている。吉田も加賀も栗原も、女優として活躍しただけに、広瀬の今後もより楽しみになった。【林尚之】