6434人が犠牲になった阪神・淡路大震災の発生から25年となった17日、落語家の桂あやめ(55)、桂吉弥(48)らが神戸新開地の喜楽館で開催された落語会「KOBE117(いいな)!落語会」に出演した。震災で母を亡くしたあやめは喜楽館のある神戸市兵庫区出身。記憶の風化を肌身で感じ、節目の25年に自らが企画した。

トークコーナーでは出演者が「あの日」について笑いを交えて振り返った。当時、神戸大の学生だった吉弥は神戸市灘区の下宿先で被災した。吉弥が「北枕で寝ていた」と話すと笑いが起こり、「南北に揺れたので冷蔵庫や本棚はボクの上には倒れてこなかった。窓を開けると、電柱が折れていた」と話した。

あやめは震災発生から5カ月後に神戸の元町の恋雅亭で行った落語会のエピソードを明かした。恋雅亭での落語会はファンの要望に応えたかたちだった。当日は、被災者の行列が出来たといい、あやめが最後列の人に「きょう、落語にきてくれたのですか」と聞くと、「これ、炊き出しちゃうの?」とエピソードを明かすと、会場はドッと沸いた。「とりあえず行列には並んでおこうだった」と当時の状況を笑いに包んで、伝えた。「電気、ガス、水よりも一番、必要のないはずの笑い。関西人は自分が悲惨な状況でも、おもしろいように伝えようとするところがある」と関西人の気質にも触れた。

トリで登場したあやめは、古典落語に震災を絡ませた改作を披露した。「熊本地震で神戸の人たちにお世話になったお礼に」と、熊本県PRキャラクターのくまモンも駆けつけ、一席を披露した。

落語会終了後、あやめは「お客さんが明るく笑っていただけたので、うれしかった」と喜び、「震災と言えば東日本大震災と言われる中、もう1度、神戸の人と神戸の震災の話をしたかった。風化するのは悪いことではない。ただ震災でなくしたものが多いだけに、みんなこの経験を生かしたいと思っている」と話した。