中森明菜「少女A」、チェッカーズ「涙のリクエスト」などの作詞家売野雅勇氏(68)が、プロデュースする「渋谷で大人のレイディオショウvol.3」が16日、東京・渋谷のリビングカフェ&ダイニングで行われた。

竹内まりや「September」、杏里「悲しみが止まらない」、上田正樹「悲しい色やね」などの作曲家林哲司氏(70)をゲストに迎えて「80’sシティ・ポップスの秘密」と題して80年代以降の日本の音楽、アイドルについて語り合った。

売野氏がプロデュースする2人組のロシア出身女性ボーカルユニットMax Luxが、79年に松原みきが発売した、林氏作曲の「真夜中のドア~StayWithMe」(三浦徳子作詞)を披露。

売野氏が「林さんの曲が大好き。自分の書いていない曲でもです」言うと、林氏は「僕もです」と自作以外の曲への愛を語った。そして「真夜中の-」について「プロデューサーから『思いっきり洋楽っぽいメロディーで』と言われました。ちょっとやり過ぎたかな」と笑った。

売野氏は「林さんのメロディーは、ものすごく上品、エレガント」。そして1960年代からヒット曲を出し続ける大御所作曲家・筒美京平氏(79)とのエピソードを披露した。「筒美さんに『後継ぎは?』って聞いたら『哲ちゃんかな』って言ってました」と明かすと、林氏は「ものすごくうれしい」と笑顔を見せた。

79年に竹内まりやが発売した「September」(松本隆作詞)について、林氏は「(歌うのは)太田裕美さんでいいかなと思って作りました。最初から竹内さんだったら、もっと洋楽っぽくしていた」と振り返った。売野氏は「大好きで、よく車で聞いていた。誰が作ったのかと思ったら、林さんだった」と話した。

現在、外国人の間で日本の70~80年代のシティーポップスのブームが起きている。アーティストの動画にも、英語での書き込みが見られる。林氏は「僕らが若い頃に、英語のポップスを聴いていたのと真逆。外国の方が、言葉を分からなくても聞いてくれている。今、ラップを中心にリズミックなものが多くなっているから、メロディーのあるものにひかれているのかも知れない」と話した。

86年の稲垣潤一のベストアルバムの表題曲となった「P.S.抱きしめたい」は売野氏作詞、林氏作曲。林氏は「80年代のAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)を代表する曲。自分も好きなんだけど難しい。僕たちの世界は、ヒット曲って1%くらい。2000曲作って20曲くらい」と話した。

曲先(きょくせん)と言われる、曲を先に作って後から作詞してもらうことが多いという林氏が「歌詞をはめていくのは、すごい」と作詞家をたたえると、売野氏は「自分でもすごいと思いますよ。無理やりね」と笑った。そして売野氏は「宝石のCMに使われた曲で『アヘンのように』っていう歌詞があって、NGだって言われたんですが、すぐに『破片のように』になおしました」と振り返った。

林氏は、曲先で売野氏と作った思い出深い楽曲に、93年の酒井美紀「永遠に好きと言えない」と86年の菊池桃子「Say Yes!」を挙げた。売野氏は「Say Yes!」について「チャゲアスより先ですよ」と、91年にCHAGE and ASKA(CHAGE&ASKA)が発売して300万枚近い大ヒットになった「SAY YES」より先であることを強調した。

最後に2人は、Max Lux、観客とともに「September」を合唱して、笑顔でトークを終えた。