新型コロナウイルスに感染した熊本市の20代女性看護師が、発症前に福岡市で紅白歌合戦出場バンド「WANIMA(ワニマ)」の公演を観覧していたことが分かった。広告代理店の電通は従業員1人が感染し、東京・汐留の本社ビル勤務の全従業員約5000人を当面、在宅勤務にする。資生堂グループも、感染者は出てないが約8000人の在宅勤務を決めた。政府はようやく「基本方針」を発表したが、国内では心配や危機感が募り、対策に追われている。

熊本市の20代女性看護師は8日午後、新幹線で移動し、マリンメッセ福岡でWANIMAの公演を友人と楽しみ、9日午後に熊本に戻った。17日にせきなどが出て、21日に感染を確認。呼吸障害が悪化して重篤になり、25日午前に人工呼吸器を装着した。WANIMA側は「会場が感染源と特定されている訳ではないが、予防・拡散防止のため」と、2月29日から3月8日までの福井県、愛媛県での4公演を中止にした。福岡公演の観客は約1万人だった。

女性と同居の60代母親も感染が確認された。母親は21日の検査は陰性だったが、25日に発熱があり再検査で陽性。熊本市立病院で食器洗いの仕事をしている。同居する50代父親と、父親と同じ職場の50代男性も感染している。感染者が5人となった熊本県では、選挙管理委員会が3月5日告示、22日投開票の知事選について、日程変更の必要があるか検討する。

電通・本社ビルの50代従業員は19日に体調不良を訴えて休み、24日に感染が確認され、入院中。濃厚接触者4人も25日から自宅待機となった。会社は当該従業員の業務スペースを消毒するなどした。26日から当面の間は本社ビルの全5000人を在宅テレワークとし、健康状態の報告も義務づけた。緊急の業務は、体調不良でなく取引先と合意があれば、取引先オフィスなどで行う。本社ビル以外のオフィスは対象ではない。

資生堂も、店頭接客などを除く、国内グループ社員の3割に当たる約8000人を26日から3月6日まで在宅勤務とした。感染者は確認されていないが、早めに感染防止対策を取ることにした。

千葉県では、感染者3人が市川市の同じフィットネスクラブ「エース〈アクシスコア〉市川」を利用していたことが分かった。発症後の2月15、16、18日に利用。発症前の2月上旬には施設内で同じスポーツ教室にいた日もあった。同じ時間帯にいた利用者やスタッフは計約600人に上り、県は電話連絡し健康状態を観察する。クラブは消毒のため3月3日まで休業。県は3人の性別や年代を明らかにしていない。