NHK・Eテレ「おかあさんといっしょ」の第9代「歌のおにいさん」だった杉田光央(あきひろ)氏(54)が1日、都内で行われた厚生労働省主催の「依存症の理解を深めるための啓発イベント」に出席した。

杉田氏は99年から03年まで「おかあさん-」で「あきひろお兄さん」として人気を集めた。16年4月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、同年6月に懲役1年6月執行猶予3年の判決を受けていた。

杉田氏は判決後に都内の自宅を引き払い、長野県上田市の更生施設、長野ダルクで執行猶予が明けるまで寮生活を送って、薬物依存症からの回復プログラムを受けた。

杉田氏は人前に出ることについて「前はすごく嫌でした。今は前を向いて歩いているので、皆さんは味方だと思っています」と話した。長野に引っ越して、依存症の自助グループに参加した時のことを「最初は、こんな汚らしい人たちと一緒で大丈夫かなと思った(笑い)。でも、大切な仲間。自分の過去のことで、いろいろ気付く、きっかけになった」と振り返った。

杉田氏は昨年6月に執行猶予が明けた翌日に長野ダルクを出た。「すごくうれしかった。だけど、何をしたらいいかと思った。お金もないし。今は松本市に引っ越して、歌の仕事の他に、新たに隣の安曇野氏で介護士の仕事をしている。資格も取って、責任を持って介護、デイサービスをしているのが生き甲斐になっています」と話した。

そして「ダルクを選ばない生き方もある。執行猶予が明ける前に、どうやって生きて行くか決めておかなくちゃいけないんだなと思う」とアドバイスを送った。

杉田氏はダルクに入ると時は「2度と歌う機会はないだろう」と思ったという。でも、長野の松川村から「真摯(しんし)に反省しているのなら歌いませんか」と声を掛けられ、17年1月に同村でコンサートを開いた。「僕たち薬物依存症の人間が立ち直るには、もちろん本人もだけど、後押しが必要なんだと思う。コンサートの出口で『ありがとう』と声掛けさせいただいたんですけど、逆に『ありがとう』と声を掛けていただいた」と話した。

最後に杉田氏はミュージカル「アニー」の主題歌「トゥモロー」を熱唱。さらに出席者と共に、7代目「歌のおにいさん」の坂田おさむ作の「あしたははれる」を合唱した。

同イベントはギャンブル、薬物、アルコールなどの依存症に苦しむ人の「回復を応援し、受け入れる社会へ」をテーマにミニライブや、トークショーを行った。当初は公開で行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で無観客イベントとして開催。ネットを通じて動画を配信した。