18年の映画「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督(36)が、完全リモートで約26分の短編映画「カメラを止めるな! リモート大作戦!」(「リモ止め」)を製作し、1日午後6時からYouTubeで配信を始めた。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出自粛を余儀なくされる中、「カメ止め」で37分間ワンシーン・ワンカットでゾンビサバイバル映画を撮影した撮影隊が、新型ウイルスの拡大で自宅待機を余儀なくされた中、リモートで再現ドラマの制作に挑む物語を作った。配信スタートから一夜明けた2日午後11時43分、再生回数は10万回の大台を突破した。

インターネット会議システム「Zoom」を通じて、日刊スポーツの単独取材に応じた上田監督に、完全リモート製作の秘密を聞いた。第1回は、キャスト自撮りの舞台裏を紹介する。

   ◇   ◇   ◇

上田監督は、4月13日に「リモ止め」製作を発表した。その際、再集結した「カメ止め」俳優陣や他の製作陣とは1度も会わず、Zoomの画面や、俳優がスマートフォンで自撮りを行った画像を受け取って、編集を行う考えを明らかにした。それから、わずか18日間で配信までこぎ着けた。

-製作のきっかけは?

上田監督 この状況で自分に何が出来るか、というのが、ずっと頭を巡っていて。やっぱり、明るいエンターテインメントを作って、見てもらう人に元気を届ける。半分は誰かの娯楽ですけど、半分は自分を救うために作ったみたいなところもあるんですよ。映画もそうですけど、何かに取り組んでいる時って、つらい現実を忘れられるので。(キャストの)みんなに関しては、何かいろいろ、やろうとしていたんじゃないですか? みんな、2つ返事で「やらせてください」と言って、受けてくれて。

-製作の流れは?

上田監督 企画を思い付いたのが4月3日で、13日に製作を発表し、その週から、おのおのの自撮りを始めてもらって。Zoomでの会話の撮影は、翌週で2日間かけて、25日に撮影が終了し、26日から編集を始めました。

-撮影手法は?

上田監督 Zoomを使った会議、会話シーンと、キャストによる自宅でのスマートフォンでの自撮りを組み合わせてやっています。会議は録画し、自撮りはキャストが1人で自分に向けて撮っている。そこまで激しい動きは出来ないし、撮影が素人のキャストが撮っているので。リモートでハイクオリティーな撮影は元々、求めていなくて。例えば、秋山ゆずきちゃん(松本逢花役)が自分に向けて撮って「来ないで!!」とやっている役、市原(洋=山ノ内洋役)が自宅でゆずきちゃんに迫る役をやっているんですが…家が違うので背景がつながるわけ、ないじゃないですか。それに、ゆずきちゃんは昼に撮っているけれど、市原は夜に撮っている。そういうところも含めての面白さになっている。うまくつなげよう、撮ろうとしていないんですよ。おのおのが撮って、うまくいかなかったところを面白さに変えているんです。

-キャストは演技と自撮りが大変では? 

上田監督 キャストには、自撮り映像を送ってもらって、僕がダメ出しをするんですけど、芝居のことだけではなくて、カメラワークをこうしてとか、照明もう少し明るく出来る、とか。キャストは撮影、録音、照明、メーク…全部1人でこなさないといけないので。ゆずきちゃんは「現場で芝居だけに集中できることに、改めて感謝した」と言っていました。長屋(和彰=神谷和明役)は「ビデオ会議が苦手で疲れました」と言っていましたし、どんぐりさん(笹原芳子役)も「ブルーライトを浴びすぎて、目がやられた」と言っていました。でも、基本的には、みんな本当に楽しんでやってくれていましたね。

第2回は昨今、さまざまな企画が展開され始めたリモート映画の中で、一線を画するための創意工夫を紹介する。【村上幸将】