解けそうで解けない自粛の日々。家でリモートワークをこなす生活が続いている。スマホをいじっている時に見つけたのが、テレビ東京の連続ミニドラマ「きょうの猫村さん」(水曜深夜0時52分)だ。

累計330万部超の、ほしよりこ氏の人気コミックが原作。ネコの「猫村ねこ」が、自分を拾ってくれた飼い主のぼっちゃんと再会するために家政婦紹介所の求人に応募して、家政婦として派遣されて働く。わずか6分の番組で、肝心のドラマは正味2分30秒という短さだ。

だが、主役の猫村ねこを演じるのが俳優松重豊(57)。12年に始まったテレビ東京系連続ドラマ「孤独のグルメ」シリーズで、49歳にして大ブレークした売れっ子。酸いも甘いもかみ分けて、食い尽くした実力派俳優が、ネコの着ぐるみを着て猫村ねこを演じる。188センチの巨体を、ちょい微妙なネコの衣装に押し込んでペーソスたっぷりの演技を見せてくれる。

しかし、このドラマの本当の恐ろしさは、主演だけじゃない。その豪華な脇役陣だ。浜田岳、石田ひかり、市川実日子、松尾スズキ、小雪、池田エライザ、水間ロン、染谷将太、安藤サクラ、荒川良々…。実力派から若きヒロインまで、ちょっとしたオールスターキャストの映画ができる。いったいギャラはどうなっているのだろうかとさえ、思ってしまう。

村田家政婦紹介所の主、村田の奥さんを演じる石田ひかりは、頭にカーラーを巻いたおばちゃん役だ。かつての“若き国民的女優”は、思い悩む猫村さんに「今日も明日になれば昨日だよ」と心に染みる言葉をかけて励ます。

同じ村田家政婦紹介所に所属する山田さんを演じるのは市川実日子。松重と石田、そして市川という、3人の実力派がそろった村田家政婦紹介所のぶっきらぼうな会話のシーンに癒やされる。

「きょうの猫村さん」は全24話。9月いっぱいまで楽しめる予定だ。だが、世の中は新型コロナウイルス感染拡大防止のために緊急事態宣言の真っ最中。連続ドラマは、撮影を中止して放送を延期する作品ばかりだ。特にテレビ東京は、キー局の中でもいち早く社員のテレワークを推し進めている。

水曜深夜の癒やしの時間は大丈夫なのか? という疑問に、テレワーク勤務中の広報担当女性は、電話の向こうから「全部撮り終えていますから大丈夫ですよ」と言い切ってくれた。テレワーク中に熱中してしまっても、仕事の邪魔にならないミニドラマ。今クールで一番のお薦めドラマだ。【小谷野俊哉】