作家で女優、歌手としても活動を再開した中江有里(46)は、自粛の中でYouTubeで歌声を配信することを始めた。27年ぶりに本格的に活動を再開した歌手活動の支えでもあり、自粛の日々を送る人たちの楽しみになればと、リモートで収録、配信している。

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講演会やトークショーの仕事は全部なくなりましたが、本を読んだり執筆の仕事は前と変わらずに家でやっています。音楽活動を再開して、27年ぶりにアルバムを出すためにレコーディングをしていたのですが、(途中で)できなくなりました。

それで“宅録”した歌をYouTube「YURI NAKAE YouTube Channel-La Vision」で配信しています。カラオケを聞きながら、声だけ録音したものを送って、それに合わせて演奏、アレンジをしてもらっています。昼間は、いろいろな騒音があるので深夜に1人で歌っています(笑い)。自分にとっての支えでもあるし、聞いてくださる方の楽しみになればと思っています。

外に出られないつらさはあります。特に人と会えない喪失感が大きい。食べることが楽しみになっているので、自炊はここ数年なかったくらい頑張っています(笑い)。動画を見てピラティスをしたり、食べる量をコントロールして太らないように気をつけています。

楽しみにしているのが書店に行くこと。ネットで近所の書店に取り寄せて、スーパーに行ったりするついでに買いに行きます。直接家まで配達でもいんですけど、なるべく書店にお金が落ちるようにと思っています。

大阪に住んでいる両親とは、6月くらいに旅行に行く約束をしていたのですが、3月から会えていません。あらためて会えないつらさを感じています。会えないってなると、もっと会っておけばよかったって…。人間って勝手なものですね。

私は15歳で故郷の大阪を出て以来、両親とは離れて暮らしています。そのせいか互いに心配し合うことが多い。私がテレビに出たり、物を書いたり、YouTubeをアップすることで両親に元気な姿を届けられればと思います。

仕事以外で唯一会えているのが妹の家族。私を「しゃんしゃん」と呼んでいるおいっ子は、この春に小学1年生になりました。青空入学式で10分くらい。ランドセルも新しいままで、妹がドリルとかをやらせていますが、本人は嫌がってます。習慣として勉強することは、学校生活で身につくことだと思うので、お友達との交流が持てないのを見ると本当にかわいそうになります。でも、本人はひょうひょうとしてますけどね(笑い)。

これが大きくなって、自我みたいなものが芽生えて、(家、学校以外の)第3の居場所みたいなものを求めていくようになると大変。思春期になると、家にいるのは苦しいだろうなと、自分の経験を踏まえて思います。何か支えになるものを見つけてくれたらいいですね。私自身は読み書きしたり、歌うことが支えになっています。

人と人の距離を取らなくてはいけなくて、また距離があってもネットでつながれる世の中だけれど、あらためて外に出て人と会える大切さをかみしめています。直接会って話して、笑い合える日が早く来ることを願っています。

◆中江有里(なかえ・ゆり)1973年(昭48)12月26日生まれ、大阪府出身。89年JR東海のCMでデビュー。90年のTBS系「なかよし」で女優デビュー。91年にはシングル「花をください」で歌手デビュー。92年の日本テレビ系「綺麗になりたい」で、連続ドラマ初主演。95年のNHK連続テレビ小説「走らんか!」ではヒロイン。13年に法大通信教育部文学部日本文学科を卒業。