戦後初の臨時休校となっていたタカラジェンヌを育成する兵庫県宝塚市の宝塚音楽学校で5日午後、108期生40人の入学式が約2カ月遅れで行われた。

新型コロナウイルスの感染防止策として、場所も例年の校内講堂から、宝塚大劇場などがある宝塚歌劇団敷地内ロビーへ移しての開催。極力「密」を避けての式典を迎え、新入の予科生は、大きな夢へ向かう第1歩を踏み出した。

ロビーは天井から換気を促し「密閉」に配慮。劇団、音楽学校関係者、宝塚市などからの来賓に加え、生徒の保護者も「2人まで」に大幅に出席者を絞り「密接」「密集」も回避した。飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、毎年、涙する生徒、保護者も多い校歌斉唱も取りやめた。

異例ずくめの式典に、小林公一校長は「今日から待ちに待った宝塚音楽学校の生徒としての生活が始まります」と式辞を始めた。

「いよいよ宝塚歌劇の舞台に立つ夢に向かっての1歩が始まりましたが、この道は長い道のりになります。108期生は合格発表も入学式も、例年とは異なる形で行わざるを得なくなりましたが、それは逆に入学した時から既に注目される期生になったということでもあります」と続け、夢の結実へ向けて着実な成長を願った。

108期生は3月下旬の合格発表でも、毎年恒例の本科生による合格番号掲示はなく、ホームページでの発表となった。合格後の寮見学なども、10人ほどずつの複数班に分かれて移動。4月17日予定だった入学式も延期され、感染対策を施しての開催。入学式は阪神・淡路大震災のあった95年にも開催されていた。

同校は4月から戦後初の臨時休校となり、兵庫県で休校が明けた6月2日からの授業再開。108期生は入寮も一斉ではなく、複数班に分かれて行われ、ここまで学校からの課題を自主的に取り組む形で、入学に備えてきた。

首席入学の奥山映美(えいみー)さん(東京都)は「最初で最後の受験でしたので、自分を信じて挑戦して本当によかった」。この2カ月は「早く憧れの宝塚音楽学校で学びたいという気持ちを募らせていました。レッスンができない日々が続いていましたので、心身ともに合格時の状態を保てるように努めました」と、緊張感を維持してこの日を迎えたという。

あこがれは前花組トップ明日海りおで「華やかで凜(りん)とした、どんな役も演じられるタカラジェンヌに」と目を輝かせた。

受験資格初年度から最終となる4回目の受験で合格した岡原ゆづきさん(広島市)は、合格時を「涙があふれて止まらないほど、うれしくて夢のようでした」と述懐。花組の音くり寿があこがれだといい、自粛中も自主稽古に励んできた。それでも「早く授業を受けたいという気持ちでいっぱいでした」とはやる本音を素直に吐露していた。

108期生は予科、本科と2年にわたり、歌、和洋のダンス、芝居や、タカラジェンヌとしての心がけ、素養などを学び、2年後の宝塚歌劇団入団を目指す。