正直、何の心配もしてません! 阪神西勇輝投手(29)が移籍2年目で開幕の大役を担う。長い親交があるオリックスファンの芸人たむらけんじ(47)は、FA移籍は「そりゃ痛かった」と言いつつ、「でも阪神で活躍して、ファンを喜ばせて…いつ帰って来てもええねんで」と究極エール。「今年もやるに決まってます!」と断言した。【取材・構成=加藤裕一】

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たむらは6・19開幕に「ただただうれしい! ファンの皆さんも僕も、自粛生活を頑張った。その最大のご褒美がプロ野球開幕やと思います」と声を弾ませた。では、西勇の阪神2年目は? と問うと笑った。

たむら 正直、何の心配もしてません。闘志満々の西選手は、今年もやるに決まってます! ただ彼が勝っても、オリックスには1勝も入ってこない…。

コロナが収束に向かい、開幕が正式に決まると連絡を入れた。西から「今年は交流戦がなくなってオリックス戦がないから、12球団勝利ができない。早くしたい!」と言われたという。

たむら 完全に阪神の選手になってて、僕もやっと諦めがつきました。…いや、日本シリーズがあるやないか! まっ、勝たせはしませんけどね。

たむらは、04年の球界再編後からオリックスファン。春季キャンプは自腹でも出向く。08年ドラフト3位の西勇とは入団以来の付き合いだ。

たむら 気がつけば、知らん間におった感じ。めちゃくちゃ気さくで明るい子やし、先輩、後輩ともに気ぃつかえる子。芸人の後輩やったら、めちゃくちゃかわいがってます。ほんまに人間性がええ。楽しむ時は楽しむし、真剣にやるときはやる。若いのにメリハリが上手。すごくしっかりしていて、向上心がある。

「オリックスの西」は強烈だった。

たむら そらもう完全エースです。ある程度試合を作って、あとは打線が打てば、ですよね。不安が一切ない投手。でも、打たれる時はある。ただ、打たれたとて「次は大丈夫」と思える投手。FAで出た時は、そりゃ痛かったですよ。

昨季、シーズン中に1度、一緒にご飯を食べた。

たむら 彼から「オフなんで」て感じやったと思う。彼はガンバの宇佐美とも仲がよくて、僕の後輩も含めて4人。ちょうど、勝てへん時期ぐらいでした。

珍しく、悩む西を見た。

たむら ちょっと“う~ん”というのはありました。でも、それは、パ・リーグにおっても勝てへん時期はある。つらかったと思います。責任感が強いし、重圧はあったでしょうから。

西勇がFA移籍を決断する前もご飯に行った。たむらから誘った。

たむら 相談相手というより、聞き役で。最後まで「やっぱりオリックスで」というのがあったみたいです。僕はもちろん「オリックスに残ってくれ」やったけど、話を聞くと「そうか、いろいろ考えることあるよね」と思った。最後はもう「好きにしい」と。

西勇への“信頼”は、自然体にあるのかもしれない。

たむら 阪神に行くと決めても「俺が変えたる」とかは、なかった。野球人生でやってきたことをやっとけば、それがいい刺激を与えるぐらいに思ってたんちゃいますか。若手にも「聞いてくることがあれば、何でも教える」言うてたし。

たむらはオリックスを応援する。そして西勇も。

たむら 西君には「いつでも帰ってきてええんやで」と言ってます。阪神で活躍して、喜ばしてからね。戻ってきても受け入れられるような選手なんですよ、オリックスファンからしたら。誰も恨んでない、と僕は思ってます。人間性がめちゃくちゃいいんで。

○…たむらも野球少年だった。最初は捕手、ひじを痛めて二塁手に。それだけに「スポーツ選手をめちゃくちゃリスペクトしてます」。今季、やはり一番気になるのはオリックスだ。「毎年、前評判だけ高い。なので僕たちはもう、慌てず騒がず、ジョーンズ様という感じです。その代わり闘志は秘めてますよ、オリックスファンは! 一番長い間優勝してへんのがオリックス。だから思いは一番強いんです」。仰木監督時代の96年、イチローらを擁して「がんばろう神戸」で日本一になって以来の優勝を心待ちにしている。

◆たむら・けんじ 本名田村憲司。1973年(昭48)5月4日生まれ、大阪府出身。府立和泉高卒。吉本興業所属で、NSC(吉本総合芸能学院)大阪校11期。同期に陣内智則、ケンドーコバヤシら。ガンバ大阪のファンでもあり、Jリーガーとの親交も深い。「炭火焼肉 たむら」を経営するなど実業家の一面も持つ。