渡辺えり(65)が8月、「女々しき力」プロジェクト序章と題し、2人芝居2本に演出・出演、リーディング劇の演出も手がける。

2人芝居は、木野花と「さるすべり~コロナノコロ」(座・高円寺、8月5~9日)、尾上松也と「消えなさいローラ」(本多劇場、8月21~23日)の2作品に、リーディングは篠井英介、深沢敦、大谷亮介が出演する、永井愛作「片づけたい女たち」(座・高円寺、8月10日)で、3作品を連続上演する。

もともとは女性劇作家の5作品の連続上演やイベントなど大型の企画だった。「『女々しき力』は、女々しいと否定的に使われる言葉を逆手にとって、男性がマイナスにとらえる女々しい力は、パワフルですばらしいんだと訴えたかった」。しかし、コロナ禍で延期した。「コロナに負けたくない。次につなげるためにも赤字覚悟でやろうと思った」と、「序章」上演になった。

「さるすべり」は即興劇の予定だったが、「急きょ書き下ろして、先日完成しました」。映画「八月の鯨」をモチーフに、老いた姉妹の現実と幻想が交錯するもので、40年来の演劇の戦友である渡辺と木野2人ならではの2人芝居になりそうだ。

「消えなさいローラ」は、渡辺が高校時代に見て、演劇を志すきっかけとなったテネシー・ウイリアムス作「ガラスの動物園」の主人公ローラが弟の帰りを待つ姿を描く別役実作品。「実は20年前にもやりたかったけれど、上演許可が下りなかった。私にとって『ガラスの動物園』は大切な作品で、原点に返りたいと思った。松也君とは、歌舞伎でご一緒したし、『狸御殿』でも共演した。お互いに信頼し合っているし、『新しいことをやりたい』と出演を決めてくれた」。

「片づけたい女たち」は、三軒茶屋婦人会としても活動する篠井、深沢、大谷の3人に加え、ト書き語りで草野とおるが出演する。「女性の生き方を問う作品だけれど、それを男優たちが演じる面白さがある」。3作品ともにバイオリン会田桃子、ベース川本悠自の生演奏があり、一部の公演をオンライン配信する。

9月には、桑原裕子作・演出の劇団KAKUTA公演「ひとよ」に客演する。映画にもなった作品で、渡辺は、夫殺しで服役し、15年ぶりに家族の元に帰ってくる母親を演じる。「稽古の掛け持ちで忙しいけれど、楽しいんです」。演出家として、女優として、フル回転している。