映画「無頼」シリーズ、刑事ドラマ「西部警察」、などで知られる俳優渡哲也(わたり・てつや)さん(本名・渡瀬道彦=わたせ・みちひこ)が10日、肺炎のため都内病院で死去したことを14日、所属の石原プロモーションが発表した。78歳。「西部-」で演じた役柄から団長と親しまれ、石原裕次郎さん没後、石原プロを支えた。14日に家族葬が営まれた。喪主は妻俊子(としこ)さん。お別れの会は故人の遺志により行わない。

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渡さんは俳優として、日本の芸能史に大きな1ページを刻んだ。1979年10月にテレビ朝日系でスタートした「西部警察」で主演。映画と同規模の制作費を投入し、テレビを超えた映像作りを徹底した「テレビ映画」として5年間に3シリーズ、全236話放送された。渡さんが演じた大門部長刑事を中心とした大門軍団と、石原裕次郎さんが演じた木暮課長が凶悪犯罪に立ち向かう姿を、爆破やカースタントを交えたアクションで描いた。

その規模は、使用した火薬4・8トン、ガソリン1万2000リットルで、壊した車両は約4680台(1話平均20台)と規模は破格だった。一方で、03年のロケで、見物客5人が重軽傷を負う人身事故が発生した。その際、渡さんは「裕次郎さんだったらどうするか」と考えて制作中止を即決した。

芸能界入りした時から、心の中には裕次郎さんがいた。青学大の学生だった1964年にスカウトされて日活に入社。大学では空手道部に所属し、翌65年1月18日のデビュー会見では、5枚重ねの瓦を拳でたたき割り空手2段の腕前を披露。同3月公開の映画「あばれ騎士道」で、宍戸錠さんとダブル主演で華々しくデビュー。その当時、日活撮影所の食堂で裕次郎さんにあいさつし、運命の出会いを果たした。

65年4月の映画「青春の裁き」で単独初主演すると、劇中で自慢の空手を披露。同9月公開の「泣かせるぜ」では、裕次郎さんと初共演。次第に日活アクションの新星として評価され“裕次郎2世”との呼び声も高まると、66年には裕次郎さんの57年の大ヒット作をリメークした「嵐を呼ぶ男」に主演した。

その中、渡さんは71年に日活との契約が切れると、映画制作で多額の負債を抱えた石原プロに裕次郎さんを訪ね、励まし、その時点で石原プロ入りを決意。翌72年に入社すると、76年に日本テレビ系ドラマ「大都会」で主人公の刑事黒岩を演じた。そこから、よりスケールを増した作品作りを目指した「西部警察」で主演し、テレビドラマでも一時代を築いた。